プロ野球において、キャッチャーのフレーミングはとても重要な技術です。一方で「意味はあるの?」「ズルなのでは?」など、疑問の声も聞こえてきます。 本記事では、野球におけるフレーミングについて基礎知識と効果をまとめました。日本プロ野球やメジャーリーグでの事情や上手いキャッチャー、よくある質問への答えなど、知っておきたいフレーミングの情報を紹介します。

野球におけるフレーミングの基礎知識

そもそも野球におけるフレーミングとは、どのような技術なのでしょうか。概要と目的をわかりやすく解説します。

ストライクの判定を得るための捕球技術

フレーミングとは、キャッチャー(捕手)の捕球技術の一つです。野球のルールでは、ストライクゾーンを通過すればストライク、通過しなければボールと判定されます。

ストライクゾーンぎりぎりのボールを、捕球の姿勢やミットの安定した動きによって自然にストライクと見せる技術がフレーミングです。

フレーミングが多く成功することで、投手側に有利な判定を引き出すことができます。キャッチャーにとって、重要な技術の一つと言えるでしょう。

正しい判定をしてもらうことが目的

フレーミングの目的は、際どいボールを自然な捕球で正確に判定してもらうことです。決して審判を騙してストライクを奪う技術ではありません。

たとえばストライクゾーンに入っていた球を捕球するときに、必要以上にミットを動かしたことでボールになることがあります。

あくまで、ストライクに見えないがストライクである球を審判に判定してもらう、誤認を避けるための技術がフレーミングです。

野球におけるフレーミングの効果

野球におけるフレーミングには、どのような効果が期待できるのでしょうか。なぜフレーミングが重要視されるのか、具体的な理由について解説します。

試合を有利に進められる

ストライクゾーンは目に見えないため、審判の判断に微妙な差が生じることがあります。その中で、フレーミングによって正確な判定を得やすくすることで、試合を有利に進められます。

ストライクが3つになればバッターアウト、ストライクゾーンから外れるとボールになるのが野球のルール。ボールが4回記録されるとフォアボール(四球)で、バッター(打者)には安全進塁権が与えられます。

フォアボールによる進塁を避け、バッターをアウトにすることがキャッチャーの役割の一つと言えるでしょう。フレーミングによって有利な判定を得られる確率が高くなることで、勝利につながります。

ピッチャーに安心感を与えられる

フレーミングで正しくストライクと判定されるようになれば、ピッチャー(投手)に安心感を与えられます。「このキャッチャーには、ギリギリに投げても大丈夫」と全力で投球に集中できるでしょう。

そうなれば、フォアボールを恐れるあまり、置きに行く(速度や変化を抑える)ことも少なくなります。ピッチングに良い影響を及ぼすことで投球が安定し、打たれる数を減らすことにつながります。

日本プロ野球とメジャーリーグにおけるフレーミングとは

日本プロ野球(NPB)とメジャーリーグ(MLB)では、フレーミングが注目されています。それぞれの事情についてまとめました。

日本プロ野球におけるフレーミング

日本プロ野球では、フレーミングへの取り組みが積極的に行われています。それまでも同様の捕球技術がありましたが、それほど注目はされていませんでした。1990年代後半、古田敦也がフレーミングの名手として活躍し、改めてフレーミングの重要性が認められたことで、フレーミング習得に取り組むキャッチャーが増えてきたのが近年の日本プロ野球です。

フレーミング技術の向上に力を入れている球団では、春季キャンプや秋キャンプなどでフレーミングの特訓がおこなわれるなど、捕手の能力として重要視されています。

メジャーリーグにおけるフレーミング

かつてのメジャーリーグでは、ミットを大きく動かす行為は審判への侮辱とみなされることもありました。しかし、トラッキングシステムが導入され、際どいボールの判定がデータとして可視化されるようになったことで、技術としての重要性が再評価されています。

平均的なキャッチャーと比較してストライクを増やした数値(UZR数値)は、キャッチャーの能力を表す指標の一つ。ヤディア・モリーナやタイラー・フラワーズ、クリスチャン・バスケスは、UZR数値の高さで評価されています。

フレーミングが上手いキャッチャー

フレーミングが上手いキャッチャーの情報をまとめました。プレーの特徴についてもぜひ注目してください。

古田敦也

所属チーム東京ヤクルトスワローズ
投球・打席右投・右打

日本球界を代表する名捕手として一時代を築いた、元プロ野球選手です。日本プロ野球において、フレーミング技術を確立。頭脳を駆使する「ID野球の申し子」とも呼ばれ、バッターの裏をかくリードが評価されていました。

中村悠平

所属チーム東京ヤクルトスワローズ
投球・打席右投・右打

強気のリードと強肩が武器。コーチの嶋基宏や臨時コーチの古田敦也の指導を受け、フレーミングの技術向上に力を入れています。2023年のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)では、正捕手として日本代表の優勝に貢献しました。

甲斐拓也

所属チーム福岡ソフトバンクホークス、読売ジャイアンツ
投球・打席右投・右打

育成ドラフト出身選手の中で、初の日本シリーズMVP獲得と初のシーズン2桁本塁打を達成。二塁送球で1.71秒を記録した圧倒的な強肩は、甲斐キャノンの異名で有名です。捕球と動作で高い評価を得ていて、フレーミングの技術向上にも力を入れています。

ヤディアー・モリーナ

所属チームセントルイス・カージナルス
投球・打席右投・右打

9度のゴールドグラブ賞受賞、9度のオールスター選出など輝かしい経歴を持つ元メジャーリーガーです。ロケットランチャーと称される強肩と、高いリード能力が特徴。フレーミング技術が非常に優れていて、体を少しズラすことで多くのストライクをとりました。

オースティン・ヘッジス

所属チームサンディエゴ・パドレス、クリーブランド・ガーディアンズ(2020〜2022、2024〜)、ピッツバーグ・パイレーツ、テキサス・レンジャーズ
投球・打席右投・右打

安定した守備力が魅力のメジャーリーガーです。盗塁阻止やキャッチング技術に優れているだけでなく、フレーミングの名手として有名。ストライクゾーンギリギリのボールを巧みな技術でストライクにしています。

野球のフレーミングに関するよくある質問

野球のフレーミングに関する質問に回答します。野球観戦初心者が抱きがちな疑問を解消しておきましょう。

Q1. フレーミングはズルではないの?

フレーミングは正しくストライクを判定してもらうための技術であり、ズルではありません。ミットを大きく動かさず、自然な捕球でストライクに見せる技術です。

たとえば、ボールの球を捕球する際、ストライクに見せかけるために不自然にミットを動かして審判の判定を操作しようとする行為はいわゆる「ミットずらし」であり、フレーミングとは異なります。

ストライクを正しく判定してもらうのがフレーミングであり、ボールをストライクと誤認させるのがミットずらしです。ミットずらしは審判への侮辱と受け取られ、非難の対象になることもあり得ます。

Q2. フレーミングはなぜそう呼ばれるの?

フレーミング(framing)を直訳すると「枠にはめる」です。長方形のストライクゾーンを枠に見立てて、ボールが収まるように捕球することが語源とされています。

Q3. フレーミングに必要な技術は?

フレーミングには以下のような技術が重要です。

  • 捕球時にミットを必要以上に動かさない
  • 頭の位置や姿勢など、捕球するときの姿勢と動作を安定させる体の使い方
  • 審判から見やすくキャッチングする

キャッチャーの技術が不足すると、ボールの勢いに流されてミットが流れます。それだけなく、ボールがストライクゾーンから外れてしまい、不利な判定につながることも。捕球や体勢には高い技術が必要です。

キャッチャーのフレーミングに注目しよう

野球におけるフレーミングとは、審判により正確なストライク判定をしてもらうための捕球技術です。あくまで自然な動きで際どい球を正しく見せるものであり、過剰にミットを動かす行為ではありません。

日本プロ野球とメジャーリーグでは、近年フレーミング技術が重要視されています。優れたキャッチャーはフレーミング技術が高いので、ぜひそのプレーに注目してください。

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