野球における延長戦の基礎知識

野球における延長戦とは、どのようなものなのでしょうか。実施条件や基本の流れ、時間制限の有無について解説します。
延長戦を実施する条件
規定の回数を超えても決着がつかないとき、延長戦として試合を継続します。プロ野球の場合、先攻と後攻に分かれて9イニング戦うのが基本のルールです。9回が終わったとき、1点でも多いほうが勝ちとなります。
9イニングが終わったあと、同点であれば延長戦に突入。延長戦のルールには12回制とタイブレーク制があり、大会やリーグによって適用されるものが異なります。
ちなみに、12回制とタイブレーク制は、ともに試合が同点で終わった場合に決着をつけるためのルールであることに変わりはありません。
2つの違いとしては、12回制は通常通り1イニングずつプレーを重ねていきますが、タイブレーク制の場合は、塁上にランナーを置いて攻撃を始めるという点が挙げられます。
野球観戦をする場合は、より試合を楽しむためにも、あらかじめ延長ルールについて調べておくのがおすすめです。
延長戦の流れと勝利条件
野球の延長戦は1イニング単位でおこないます。通常の試合と同じように、交代しながら攻撃と守備を繰り返すのが基本の流れです。
イニングが終了したとき点数が多いチームの勝利です。後攻チームの場合は、先攻チームの得点を上回ったときサヨナラゲームが成立するため、その時点で決着。イニング終了時点で同点の場合は延長戦が継続されます。
延長戦に時間制限はない
野球は試合時間が決まっていないスポーツです。少年野球や中学野球など例外はあるものの、基本的に時間制限がありません。一般的な試合時間は3時間ほどで、延長戦に突入すればさらに長くなります。
延長戦に突入するも決着がつかず、試合がなかなか終わらないことも。試合観戦をするなら、長引くことを想定しておくことが大事です。なお、日本プロ野球の場合は、時間制限はなくても延長戦の回数制限はあります。
リーグや大会ごとに適用される延長ルール

適用される延長ルールを、リーグや大会ごとにまとめました。タイブレーク制における、開始時点の状態とあわせて紹介しています。
リーグや大会の種類 | 延長ルール |
---|---|
少年野球 | タイブレーク(ノーアウト一塁・二塁) |
中学野球 | 連盟・大会で異なる |
高校野球 | タイブレーク(ノーアウト一塁・二塁) |
都市対抗野球大会 | タイブレーク(ノーアウト一塁・二塁) |
社会人野球 | 連盟・大会で異なる |
日本プロ野球(NPB) | 12回制 |
日本プロ野球(NPB)二軍 | 試験的にタイブレークを導入 |
メジャーリーグベースボール(MLB) | タイブレーク(ノーアウト二塁) |
WBC | タイブレーク(ノーアウト二塁) |
オリンピック | タイブレーク(ノーアウト一塁・二塁) |
野球の延長ルールは、リーグや大会ごとに定期的に変更されています。上記の延長ルールは2025年6月時点のものなので、試合観戦をする場合は最新の情報をチェックしてください。
野球の延長ルール:12回制

12回制の延長ルールについてまとめました。日本プロ野球で導入されているルールなので、ぜひチェックしてください。
12回を限度として延長戦を行う
1イニング単位で攻撃と守備を繰り返し、12回を限度として延長戦を行うルールです。12回が終わっても点差がつかない場合は、引き分けになります。
通常の試合と同じ形式で最大12回まで継続されるので、タイブレーク制と比較して長引きやすいのが特徴。選手の出場機会は増えますが、選手の負担は大きくなりやすい傾向があります。
日本プロ野球では12回制を導入
日本プロ野球では12回制を長く採用しています。感染症の影響で2020年は10回制、2019年は延長なしのルールが適用されましたが、2022年には12回制に戻っています。
プロ野球日本シリーズでは、7回戦まで12回制で、第8戦以降は延長回の制限なくなるルール。オープン戦の場合は延長戦がありません。二軍の公式戦では、タイブレーク制が試験的に導入されています。
なお、日本の社会人野球の場合はトーナメント戦が多く、勝敗をつける必要があります。そのため延長戦は回数無制限がほとんどです。サスペンデッドゲーム(一時中断してから後日再開)や、タイブレーク制が採用されることもあります。
野球の延長ルール:タイブレーク制

近年では、延長戦にタイブレーク制を取り入れるリーグ・大会が増えてきています。高校野球のタイブレーク制とMLBのタイブレーク制について詳しく解説していくので、ぜひ知識として知っておきましょう。
点が入りやすい状態で始める
タイブレーク制は、点が入りやすい状態からスタートします。延長戦の早期決着が主な目的です。ランナー(走者)を塁に置いて始まるため、より緊迫する状況からの攻防が楽しめます。
タイブレーク制は、国際的にルールが統一されているわけではありません。スタートするイニングや塁に置くランナーの数はリーグや大会によって異なるため、あらかじめ確認しておきましょう。
高校野球のタイブレーク制
高校野球の延長戦を始める回数は、2023年にそれまでの13回から10回に変更されました。その他の基本的なルールは以下の通りです。
- 攻撃側のチームはノーアウトの状態で一塁と二塁にランナーを置く
- 打順は前イニングから継続する
- 一塁のランナーは10回先頭打者の前の打順に該当する選手
- 二塁ランナーは一塁ランナーの前の打順に該当する選手
- 攻撃側は代打や代走が認められている
- 守備側は選手交代やポジションの変更ができる
高校野球のタイブレーク制にはとくに回数制限はありません。ただし、1人の投手が1日に登板できるイニング数は、15イニング以内までと決まっています。
MLBのタイブレーク制
MLBでは、感染症の影響によって2020年からタイブレーク制を導入しています。延長戦の長引き防止や投手の負担軽減のために、2023年には恒久化を決定しました。
試合が9イニングを超えた場合、走者を二塁においた状態で延長戦をスタートします。ただし、ポストシーズンやワールドシリーズなどでは、タイブレーク制は採用されていません。
プロ野球の延長戦に関する豆知識

プロ野球の延長戦に関する豆知識をまとめてご紹介します。
日本プロ野球では延長戦の上限回数がなかった
かつて日本のプロ野球では、延長戦の条件回数がありませんでした。1942年の大洋軍対名古屋軍においては、延長28回を記録しています。
現在のプロ野球では、試合時間や選手の体調を考慮して回数制限が設けられました。
なお、サスペンデッドゲームが導入された2014年の全国高校軟式野球選手権大会・崇徳高校対中京高校では、4日間にわたり延長50回の激闘を繰り広げています。
日本プロ野球の最長時間は6時間以上
日本プロ野球における最長時間は、延長15回で計6時間26分です。1992年のタイガース対ヤクルトスワローズの試合でした。
結果としては、15回の延長戦が終了したのち引き分けに。タイガースに所属していた八木選手のホームラン誤審も有名で、日本のプロ野球史に残る試合といえます。
延長戦にも注目して野球観戦を楽しもう
野球では、規定の回数を超えても勝敗がつかないときに延長戦に突入します。交代しながら攻撃と守備をおこない、イニング終了時点で点数が多いチームが勝利です。
延長戦では一つ一つのプレーが勝敗を左右します。緊迫の試合展開にぜひ注目してください。大会やリーグによって採用されている延長ルールが異なるので、あらかじめチェックしておきましょう。
ENSPORTS fanでは、野球観戦をたくさんの方々に楽しんでいただくために、観戦マナーや観戦初心者のためのルール解説記事なども公開中。そちらぜひチェックしてみてください。