野球における選手交代の基本的な仕組み

まず、野球における選手交代の定義を解説し、続いて戦術上で重要とされる理由を紹介します。
出場選手と控えメンバーを交代すること
選手交代とは、試合に出場している選手とベンチにいる控え選手を交代することを指します。交代した選手は、ベンチに戻る選手がついていた打順に入るのがルールです。
プロ野球の場合、まず監督が主審に交代することを伝えます。球審から相手チームベンチと本部(アナウンス席)に伝達され、選手交代がアナウンスされたのち、交代するのが一般的な流れ。ちなみに、一度に複数の選手が交代することもあります。
戦術としての選手交代に注目
野球における選手交代は、試合の流れや戦術を変えるための重要な要素です。たとえば、左バッターが打席に立っているときに、有利な左ピッチャー(投手)に交代するというように、状況にあわせて柔軟に判断します。
ピッチャー交代や代打、代走など選手交代のタイミングが、チームの勝敗を左右することは少なくありません。いつどのタイミングで誰に交代するのか、監督の采配にぜひ注目してください。
野球における選手交代のルール

野球における選手交代のルールをまとめました。どの選手が交代するかでルールが異なるため、違いをチェックしておきましょう。
ピッチャーの交代ルール
ピッチャー(投手)は、1人のバッター相手に結果を出すまで控え選手と交代できません。以下のうち一つを満たす必要があります。
- バッターをアウトにする
- 一塁にランナーを出塁させる
- 牽制球でアウトカウントをとる
日本プロ野球(NPB)では、2人目以降のバッター相手であれば、どのタイミングでも交代が可能です。
ちなみに、1人もしくは2人の特定バッターを抑えるためにピッチャーを交代することを、ワンポイントリリーフといいます。メジャーリーグ(MLB)では禁止されていて、バッター3人と対戦するかイニングが終了するまで交代できません。
バッターの交代ルール
打席が回ってきたバッター(打者)は、控え選手と交代できます。バッターが交代することを代打ということも。2ストライク後など打席の途中であっても、交代は認められています。
バッターは、1回も打席に立たなくても交代することが可能です。また、代打で出した左バッターに有利な左ピッチャーをあてられたとき、対応として右バッターを代打に送る、などの交代も認められています。「代打の代打」と呼ばれる戦略の一つです。
ただし、指名打者(投手の代わりに打席にたつ選手)が交代した場合は、代打の選手が指名打者の役割を引き継ぐルールです。
ランナーの交代ルール
野球では、攻撃側がタイムを要求して、控えの選手と塁上にいるランナー(走者)と交代が可能です。代走やピンチランナーとも呼ばれます。代走に出た選手は、退いた選手の打順を引き継ぎ、次回の攻撃ではその打順で打席に立つのがルールです。
塁上にでた指名打者を選手交代した場合は、代走の選手が指名打者を引き継ぎます。ちなみに、指名打者は代走者になることができません。
守備の交代ルール
野球では、ボールデッド状態(プレー中ではないとき)であれば、いつでも守備の交代が可能です。
守備についている野手が、控え選手と交代します。次の攻撃のときは、退いた選手の打順にそのまま入るのがルールです。
ただし、選手同士が守備位置を代わる場合は、選手交代ではなくシート変更にあたります。シート変更のケースだと打順は変更されません。
ベンチに戻った選手はその試合に再出場できない
選手交代をしてベンチに下がった選手は、同じ試合には再出場できないルールです。そのため選手交代は、慎重に決断しなければいけません。
ただし、指名打者制における大谷ルールでは、先発ピッチャーと指名打者を別々の2人として考えます。先発ピッチャーを降板したあとも指名打者として、または指名打者が交代しても投手として再度出場できます。
選手交代とあわせて確認したい野球用語

選手交代を理解するうえで確認しておきたい野球用語を、解説します。意味やルールについて、チェックしておきましょう。
指名打者制
指名打者制(DH制)とは、ピッチャーの打順が回ってきたとき代わりに打席に立つ選手を指名する制度です。攻撃専門の選手なので守備位置にはつきません。
メジャーリーグ(MLB)と、日本プロ野球(NPB)のパ・リーグ(セ・リーグでも2027年から導入予定)で採用されています。さらにメジャーリーグと日本プロ野球の両方で、ピッチャーとバッターの兼任を可能にした大谷ルールが追加されました。
シート変更
シート変更とは、試合に出場している選手同士で守備位置を変更することです。メンバー同士が交代するだけなので、選手交代と異なり双方が継続して出場できます。
ただし、指名打者制のときに登板中のピッチャーが他の守備位置につくと、指名打者は解除されます。他の守備位置についた選手がピッチャーになった場合も同様で、指名打者の役割が消滅するルールです。
ダブルスイッチ
ダブルスイッチとは、ピッチャーと野手を同時に交代する戦術のこと。このとき、新しいピッチャーと野手の打順も入れ替わります。ダブルスイッチの主な目的としては、バッティングが不得意なピッチャーの打順を遅らせることが挙げられます。
ただし、指名打者制を採用しているリーグの場合、ピッチャーが打席に立つことはありません。そのため指名打者が途中で解除されない限り、ダブルスイッチの必要はなくなります。
野球の選手交代に関するよくある疑問

野球の選手交代に関するよくある質問を、まとめました。選手交代についてわからないことがある場合は、ぜひ参考にしてください。
Q1. 選手交代のタイミングは?
ボールデッド(試合が停止されてプレイが無効になる時間)の状態であれば、いつでも選手交代が認められています。主に審判がタイムを宣言したときが対象です。監督が必要と判断したタイミングで、選手交代を伝えます。
Q2. 選手交代ができる人数は?
選手交代の人数には制限がありません。攻撃や守備に関係なく、ベンチ入りした控え選手が残っていれば何度でも交代できます。ただし、一度出場してベンチに戻った選手は、再出場することができません。
Q3. 控えの選手がいなくなったらどうする?
控え選手がいなくなると、選手交代はできなくなります。控え選手がいなくなり、さらに出場した選手がケガなどでプレーできなくなれば、試合続行に必要な9人を維持できません。
試合続行ができなくなった場合は、没収試合(フォーフィッテッドゲーム)となり、人数が足りないチームの負けになります。
プロ野球で没収試合になることは基本的にありません。ただし、高校野球では、ギリギリの人数でプレーしているチームの場合、没収試合になることもあります。
Q4. 選手交代の伝え忘れがあったらどうなる?
日本プロ野球の野球規則では、監督が主審に選手交代を伝え忘れた場合でも選手の出場が認められています。行われたプレーも正規のものです。
通告したときと同様に、通常通り試合は進行します。ただし、選手交代の通告を怠った監督は、厳重注意や制裁など処分を受ける可能性があります。
野球の選手交代に注目しよう
野球における選手交代とは、ベンチの控え選手と出場している選手を交代することです。選手交代は重要な戦術の一つであり、試合の行方を左右することもあります。
選手交代のルールを理解しておけば、監督の戦術意図や試合展開の変化をより深く味わえるはずです。どの選手がどのタイミングで交代するのか、試合観戦の際にぜひ注目してください。
ENSPORTS fanでは、野球観戦をたくさんの方々に楽しんでいただくために、観戦マナーや観戦初心者のためのルール解説記事なども公開中。そちらぜひチェックしてみてください。