サッカーには、アディショナルタイムという独自のルールがあります。 アディショナルタイムの間で劇的に試合展開が変化することもあるため、基礎知識を理解することでよりサッカー観戦を楽しめるはずです。 本記事では、アディショナルタイムの意味や基本ルールをまとめました。試合結果が大きく左右された具体例や、あわせて覚えておきたいタイムルールも解説するので、ぜひチェックしてください。

アディショナルタイムとは試合が中断された時間のこと

アディショナルタイムとは、サッカーの試合中に競技以外に費やされた時間のこと。アディショナルとは「追加」のという意味で、サッカーの試合が中断された分を延長する時間と定義されています。

まず、この章ではアディショナルタイムの基礎知識を解説します。追加される理由やロスタイムとの違いについて、チェックしておきましょう。

選手交代やボールがフィールド外に出た時間などの合計

先述のとおり、アディショナルタイムとはサッカーの試合中に中断された時間を指します。

この中断された分とは、選手交代や怪我をした選手の手当てをする時、ボールがフィールドの外に出た時など試合の進行がストップした時間のこと。

さらに、ファールによってフリーキックが与えられた時や得点が入った際のゴールパフォーマンスの時間なども含まれます。

また、気温によって設けられる飲水タイムやクーリングブレイクもアディショナルタイムとして前後半それぞれに追加されます。

サッカーの試合では、途中でタイマーが止まることはありません。競技以外に費やされた時間をあとから補い、試合時間を90分にすることがアディショナルタイムの目的です。

アディショナルタイムとロスタイムは一緒

アディショナルタイムとロスタイムには違いがありません。

ロスタイムは直訳すると失われた時間の意味で、日本のみで使用されていた和製英語です。

しかし、失われた時間という意味に良い印象がないこと、国際基準に統一することなどの理由で、2010年代から日本でもアディショナルタイムが使われるようになりました。

現在では、ロスタイムではなくアディショナルタイムを使用するのが一般的です。

アディショナルタイムの基本ルール

アディショナルタイムの基本ルールをまとめました。どのように時間が決まるのか、わかりやすく解説します。

アディショナルタイムは主審が決める

試合のとき、主審は2つの時計を使用して試合時間を計測しています。片方は試合開始から止めない時計で、もう片方は試合が中断される出来事があったときに止める時計です。この2つの時計の時間差によって、アディショナルタイムの時間が決まるのです。

前半と後半の終了前のタイミングで第4審判に伝達され、両チームの監督とベンチに伝えられる流れです。

スタジアムの電光表示板には、秒数を切り捨てた時間がアディショナルタイムとして表示される仕組みになっています。

アディショナルタイムに追加される例

アディショナルタイムは、以下のような競技以外に費やされた時間で追加されます。

  • 選手交代
  • 選手の怪我・運搬
  • VARチェック
  • VARオンリービュー
  • OFR(オンフィールドレビュー)
  • イエローカード・レッドカードの提示
  • 飲水タイム
  • クーリングブレイク
  • プレーの再開を遅延する行為

プレーの再開を遅延する行為は、負傷したフリや過度なゴールパフォーマンスなどのこと。アディショナルタイムに追加されるため遅延行為には意味がなく、悪質だと判断されればイエローカードが提示されます。

スローインやゴールキック、コーナーキックは競技時間に含まれるので、アディショナルタイムには追加されません。なお、交代が多い後半のほうが、アディショナルタイムが長くなる傾向があります。

アディショナルタイムの上限と下限は設定されていない

アディショナルタイムには、上限や下限は設けられていません。最長でも前半・後半の時間それぞれの時間をすべて使って45分、最短だとアディショナルタイムなしの0分でしょう。

国やリーグによって異なりますが、平均的なアディショナルタイムは前半・後半をあわせて4分ほど。最長は2014年のイングランドのチェシャー・シニア・カップのときで、負傷者の処置・運搬によって28分になりました。

アディショナルタイムは表示ピッタリではない

実は、電光掲示板に表示されるアディショナルタイムは秒数が省略されており、あくまで目安。つまりアディショナルタイム4分の表示なら、4分00秒〜4分59秒の間で試合が終了するわけです。

片方のチームがチャンスを迎えているときは、攻撃やボールが途切れるまで継続されやすくなります。一度決めたアディショナルタイムの時間を減らすことはできませんが、増やすことは可能です。

アディショナルタイムの最中に競技以外に費やされる時間が発生した場合に限り、その時間が追加されます。あくまで試合時間を確保するためなので、前半・後半でそれぞれ45分以上は長くなることはありません。

アディショナルタイムで試合結果が大きく変わることも

追加されたアディショナルタイムでの追加得点が、試合の明暗を左右することもあります。

具体的な例は以下のとおりです。

ドーハの悲劇対イラク戦の失点により日本代表がW杯アメリカ大会の本戦出場を逃す
ヤウンデの悲劇対エジプト戦の失点によりカメルーン代表がW杯ドイツ大会の本戦出場を逃す
ロストフの悲劇対ベルギー戦の失点により日本代表がW杯カタール大会の8強入りを逃す
18年W杯アジア予選対イラク戦で山口蛍選手バースデーゴールで決勝点をあげる
EURO2024準決勝対オランダでイングランド代表が決勝点をあげる

アディショナルタイムのたった数分の中で劇的な展開を迎えた結果、さまざまな歴史的ドラマが生まれる時間でもあります。

アディショナルタイムに注目することで、より深くサッカー観戦を楽しめるでしょう。

アディショナルタイムとあわせて覚えておきたいタイムルール

アディショナルタイム以外にも、サッカーにはさまざまなタイムルールがあります。

サッカーの試合をより深い視点で観戦するために、基本のルールを確認しておきましょう。

サッカーの試合時間は90分

プロサッカーの試合時間は、前半と後半でそれぞれ45分ずつで合計90分。前半と後半の間には15分のハーフタイムがあり、休憩や後半に向けた作戦会議がおこなわれます。

つまり試合時間の90分とハーフタイムの15分に、アディショナルタイムが追加されるのが基本の時間配分です。

一般的にキックオフからタイムアップの笛がなるまで、だいたい120分と考えられます。

延長戦

90分の試合時間とアディショナルタイムで決着がつかない場合は、延長戦がおこないます。

おこなわれるのは勝ち負けを決める必要があるトーナメント戦だけで、リーグ戦ではそのまま引き分けとなるのが基本のルールです。

プロサッカーの場合、延長戦の時間は前半と後半がそれぞれ15分で合計は30分。ハーフタイムはなく、代わりに短い給水時間が設けられています。なお、延長戦でも競技以外に費やされた時間があれば、アディショナルタイムとして追加されるルールです。

PK戦

延長戦で決着がつかない場合はPK戦をおこないます。両チーム5人ずつが交互に蹴って、より多く得点を入れたチームが勝者です。延長戦と同じくトーナメント戦のときのみで、リーグ戦ではおこなわれません。

5人が蹴ったあとも決着がつかないときは、1人ずつ蹴って一方のチームがより多く得点をあげるまで続けます。大会によっては延長戦がなくPK戦のみをおこなうケースがあるため、あらかじめ確認しておきましょう。

アディショナルタイムを理解してサッカー観戦を楽しもう

サッカーでは、競技以外に費やされた時間がアディショナルタイムとして追加されます。選手交代や怪我人の処置・運搬などが該当して、最長は45分で最短なら0分です。

アディショナルタイム中の得点によって、試合結果が大きく左右されたケースはたくさんあります。短い時間の中で生まれるドラマに注目して、サッカー観戦を楽しんでください。

ENSPORTS fanでは、アディショナルタイム以外のサッカーの基本的なルールも、初心者にわかりやすくまとめてご紹介しています。ぜひそちらもチェックしてみてください。