野球におけるライトに関する基礎知識

野球におけるライトの基礎知識をまとめました。かつては守備が苦手な選手がライトを守ることが多いといわれてきましたが、それは本当なのでしょうか。基礎知識と合わせて解説していきます。
外野の右側を守る選手
野球におけるライトとは、キャッチャーからみて外野の右側を守る外野手(内野の外側にあるエリアを守る選手)です。ファーストとセカンドの後方を守備位置とします。
割り当てられる守備番号は9番で、右翼手やright fielder(ライトフィールダー)とも。二塁や三塁など右方向に投げる機会が多いため、左投げの選手に向いています。
プロ野球では高い守備力が必要とされる
以前の少年野球では、左バッターや流し打ちができる右バッターがあまりいませんでした。ボールが飛んでくる機会が少ないことから、「ライトは守備が苦手な選手がつくポジション」というイメージがあったのは事実です。
少年野球では「ライパチ」(ライトで8番)と呼ばれることもありましたが、プロ野球となると事情はまったく異なります。ライトには左バッターの強打や右バッターの流し打ちが多く飛んでくるため、高い守備力が求められるのが現状です。
野球におけるライトの役割

野球におけるライトには、どのような役割があるのでしょうか。重要な4つの役割について解説します。
打球の処理
ライトの守備範囲はライトファウルゾーンからセンターまでで、ファーストやセカンド後方のフライなどを捕球します。バッターの特徴や状況にあわせて位置取りして、より確実に打球を処理しなければいけません。
ほかにはホームベースにボールを返球するバックホーム送球や、内野手を中継ぎしてから目的地に中継ぎするカットプレー(中継ぎプレー)のための送球なども必要です。シーンに応じて、適切に打球を処理しなければいけません。
バックアップ
ファースト・セカンド・センターに飛んだ打球を、バックアップします。バックアップとは、ミスを想定して味方の背後に回り込むことです。
送球が逸れたときや取りそこねたときに備えて、バックアップに入ります。ライトは打球処理やバックアップの機会が多いため、広い範囲を走る必要があり、自然と運動量が増えるのが特徴です。
センターへの指示
長打のときや塁上にランナーがいてセンターが打球処理するとき、センターに指示するのもライトの重要な役割です。中継手のいる位置やランナーが進んだ位置から、すぐ投げられるように送球する塁を指示します。
センターが打球を正確に追えていない場合、センターフライが浅いか深いかを伝えることも。飛んでいる打球は正面と側面で見え方が異なり、見誤ることがあるのが主な理由です。
野球のライトに求められる能力

野球のライトに求められる能力をまとめました。どのような選手に向いているポジションなのか、チェックしていきましょう。
肩の強さ
野球のライトは、三塁まで最も距離があるポジションです。三塁を目指すランナーの進塁を防ぐためには、ノーバウンドで三塁まで投げられる肩の強さが求められます。
さらに確実に送球するためには、投球のコントロールが重要です。力強く正確な送球で進塁を阻止することが、野球におけるライトに求められます。
ポジショニング
打球の処理をする際には、状況にあわせたポジショニングが必要とされます。ポジショニングとは、状況に応じて適切な守備位置につくことです。
試合状況やキャッチャーの配球、打者のスイングを確認して、効率的に打球を処理できる位置に移動する必要があります。相手バッターの長打や得点につながる打球を阻止するためには、適切な位置取りをする能力が必要不可欠です。
脚力と体力
広い守備範囲に対応するためには、打球に追いつく脚力が必要です。とくにフライは風に影響されやすく、打球が伸びたり風に戻されたりすることがあります。
あらゆる打球を余裕をもって捕球するためには、適切な守備位置まで素早く走らなければいけません。さらに広範囲の打球の処理やバックアップのための体力や、進んでバックアップをする積極性も重要です。
状況判断能力
左バッターの強いライナー、ライン側に切れていく流しうちなど、ライトには判断が難しい打球が飛んできます。上空の風の影響を受けたり、ドライブやスライスがかかっていたりと不規則です。
ほかにもライトとセンターのどちらが打球を処理すべきかなど、判断が求められるシーンはたくさんあります。状況を瞬時に把握して打球を確実に処理するためには、状況判断能力も重要です。
野球におけるライトとレフトの違い

野球におけるレフトとは、外野の左側を守るポジションです。レフトとライトの違いを以下にまとめました。
レフト | ライト | |
---|---|---|
守備位置 | 外野の左側 | 外野の右側 |
守備番号 | 7番 | 9番 |
日本語 | 左翼手 | 右翼手 |
守備機会 | 比較的少ない | 比較的多い |
肩の強さ | そこまで求められない | 必要 |
レフトはライトと比べて守備機会が少ないため、打撃力を重視して起用されることが多く、守備をあまり得意としない選手が担当するケースも増える傾向にあります。ライトと違って、肩の強さもそれほど求められません。
野球のライトで有名な選手

野球のライトで有名な元選手や現役選手をまとめました。それぞれの概要と守備の特徴について、くわしく解説します。
鈴木 一朗
所属チーム | オリックス・ブルーウェーブ、シアトル・マリナーズ(2度在籍)、ニューヨーク・ヤンキース、マイアミ・マーリンズ、 |
ポジション | 外野手 |
イチローの愛称で親しまれた元プロ野球選手です。通算安打世界記録保持者や最多試合出場世界記録保持者など、数々の功績があります。肩が非常に強く、その送球はレーザービームと称されました。2005年にフェンスを駆け上って捕球した、スパイダーマンキャッチでも有名です。
大田泰示
所属チーム | 読売ジャイアンツ、北海道日本ハムファイターズ、横浜DeNAベイスターズ |
ポジション | 外野手 |
走塁・攻撃・守備において、高い能力をもった元プロ野球選手です。守備範囲の広さと肩の強さを活かして活躍しました。打撃面では豪快なフルスイングを信条としていて、高い長打力を誇ります。
鈴木誠也
所属チーム | 広島東洋カープ、シカゴ・カブス |
ポジション | 外野手、指名打者 |
守備に優れた選手を表彰するゴールデングラブ賞を5回受賞しています。強い肩を武器にした守備が魅力で、最多捕殺(アウト成立を補助したときの守備記録)を3回記録。東京オリンピックの侍ジャパンで4番をつとめた、非常に優秀な強打者でもあります。
岡林勇希
所属チーム | 中日ドラゴンズ |
ポジション | 外野手 |
高い身体能力による強固な守備が特徴のプロ野球選手です。ゴールデングラブ賞を3回受賞、2024年には233度の守備機会において失策(ミスによって出塁や盗塁を許すこと)が0回という驚異の記録を出しました。バッターとしては、21世紀生まれ初の打撃タイトル獲得者でもあります。
ライトの守備に注目して観戦しよう
ライトは、キャッチャーから見て外野の右側を守るポジションです。プロ野球では高い守備力が必要とされ、ポジショニングや状況判断能力などさまざまな能力が求められます。
ライトの強い肩が繰り出す三塁への送球は、試合の行方を左右することも少なくありません。その役割や求められる能力に注目すれば、野球の試合がより面白く観戦できるのではないでしょうか。
ENSPORTS fanでは、野球観戦をたくさんの方々に楽しんでいただくために、観戦マナーや観戦初心者のためのルール解説記事なども公開中。そちらぜひチェックしてみてください。