本記事では、ゼロステップの基本ルールから、観戦初心者が楽しむためのポイントまでくわしく解説します。ゼロステップは、FIBA(国際バスケットボール連盟)が定めた新ルールであり、オフェンスに大きな自由度を与える重要な要素です。ぜひバスケ観戦の際に注目してみてください。

ゼロステップとは?

ゼロステップとは、2018年より「トラベリングの新ルール」 として導入された概念です。

はじめに、ゼロステップの概要を解説します。

そもそも「トラベリング」とは?

ゼロステップを理解するためには、まずトラベリングについて知る必要があります。

トラベリングをシンプルに解説すると「ボールを持った状態で3歩以上歩いてはいけない」というルールです。

しかし、厳密にいうと上記の認識には誤りがあります。

バスケットボールでは、ボールを持った時点やボールを空中で持った後に着地した側の足をピボットフット(軸足)といいます。

トラベリングとは、正確には下記の2つのパターンで取られる反則です。

1.ピボットフットがズレた

2.ピボットフットを地面から離し、改めて地面についた

「ボールを持った状態で3歩以上歩いてはいけない」は、2のピボットフットを地面から離し、改めて地面についたに該当します。

ゼロステップの基本ルール

ゼロステップ(ギャザーステップ)
ゼロステップ(ギャザーステップ)

従来のルールでは、ドリブルを終えてボールをキャッチした瞬間に踏み出した一歩目が「1歩目」とカウントされていました。

しかし、FIBA(国際バスケットボール連盟)のルール改正により、キャッチ直後の一歩目は「ゼロ歩」と見なされるようになったのです。

そのため、ゼロ歩目の後にさらに2歩が認められ、より自然で滑らかな動きが可能となりました。

ここで重要となるのが「ギャザー」という動作です。ギャザーとは、ドリブルをやめてボールをしっかり両手で保持した瞬間のこと。

とくにオフェンス選手にとっては、ドリブルからシュートやパスに移行する際にスムーズなステップが可能となり、攻撃の多様性が増しています。

なぜ1歩目なのに「ゼロ」なのか

1歩目が「ゼロ」とカウントされる理由は、ボールを掴んだ瞬間の足の動きは、完全な保持ではなく「動作の継続」と判断されるためです。

ゼロステップが導入された背景には、選手の身体能力の向上とプレースピードの進化があります。

選手の動きがより速く複雑になるなかで、従来のステップカウントでは対応しきれなくなってきたのです。

また、FIBAはトラベリングに関するルールの解釈を明確化し、世界中の選手が公平にプレーできるようにする意図もありました。

ゼロステップの導入によって、選手は流れるようなステップでシュートやパスに繋げられるようになりました。つまり、ゼロステップは「選手がより自然でスムーズに動けるようにするためのルール」なのです。

ゼロステップをめぐる議論

ゼロステップを導入したことで、バスケットボールの試合がより魅力的なものとなりました。

一方で、数々の議論を呼んでいるのも事実です。

日本と海外の認識の違い

1つ目の問題点は、日本と海外の認識の違いです。

NBAや国際試合では、ゼロステップはすでに一般的なプレーとして浸透しています。

しかし、日本国内では「まだ見慣れない」「トラベリングでは?」という声もあり、観客や一部の指導者の間で戸惑いが見られます。

ルール自体は国際基準に則っていますが、浸透度には大きな差があるのが現状です。プロや国際試合では認められていますが、育成年代の試合ではまだ統一されていない場合もあります。

審判の判定基準の難しさ

2つ目の問題点は、審判の判定基準の難しさです。

ボールをキャッチした瞬間に着いている足なのか、空中でキャッチした後に着いた足なのかの判断は難しく、判定が審判によって揺れるケースも少なくありません。

選手や観客から「今のはゼロステップ?それともトラベリング?」という疑問が出やすいのは、ゼロステップの判定の難しさに起因しています。

分かりづらさと混乱

ゼロステップは、従来の感覚では「余計に歩いている」ように映ります。

とくに観客側からすると、違反かどうか分かりにくいと感じるかもしれません。

このため「審判によって判定が違う」「納得できない」といった混乱が生まれています。

ただし、ルールを理解していれば「合法的に追加のステップを踏んでいる」と納得でき、観戦の面白さも増すはずです。

ゼロステップを使った代表的なプレー

ゼロステップが導入されたことで、選手たちにとってはプレーの幅が広がりました。

ここでは、ゼロステップを使った代表的なプレーを3つ紹介します。

ユーロステップ

ユーロステップ シノビリステップ

ユーロステップとは、バスケットボールにおけるランニングステップの応用技術で、通称「ジノビリステップ」とも呼ばれています。

ドリブル後、ジグザグに2ステップして、レイアップシュートを放ちます。

1歩目のステップをフェイントに使うことで、ディフェンスをかわすことも可能です。

ユーロステップは以前から行われていましたが、ゼロステップが導入されたことで明確にルール違反ではなくなりました。

ギャロップステップ

ギャロップステップ

ギャロップステップとは、馬の駆け足のようにリズムを変えながら踏み出すプレーです。

相手ディフェンスが反応しづらく、一気にゴールへ迫ることができます。

ゼロステップが導入されたことで、ギャロップステップもスムーズさが増しました。

ステップバックシュート

ステップバックシュート

ステップバックシュートとは、ディフェンスを押し込んでから後方にステップして放つシュートです。

特にガード選手が得意とし、3ポイントシュートに繋げるケースが多く見られます。

ギャザーのタイミングを合わせることで、1歩余分に下がったようなステップバックができるようになりました。

観戦初心者が注目したいゼロステップのポイント

最後に、観戦初心者が注目したいゼロステップのポイントを3つ解説します。

観戦時に意識することで、よりバスケットボールの試合を楽しめるかもしれません

どんな場面でゼロステップが出るのか

1つ目の注目ポイントは、どんな場面でゼロステップが出るのかです。

ゼロステップは、主にドリブルからシュートに移行する瞬間に多用されます。

とくに速攻やゴール下でのフィニッシュシーンで見られることが多く、観戦時は「ドリブルを終えてからの一歩」に注目すると分かりやすいでしょう。

ゼロステップからの得点パターン

2つ目の注目ポイントは、ゼロステップからの得点パターンです。

ゼロステップの導入によって、バスケットボールの得点パターンは格段に増加しました。

レイアップやダンクのみではく、バリエーション豊かなフィニッシュが可能となり、観客側のモチベーションもアップしています。

ディフェンス側の対応

3つ目の注目ポイントは、ディフェンス側の対応です。

ゼロステップは攻撃側に有利なルール変更ですが、当然ディフェンスも対策を取ります。

観戦時は「オフェンスがどのようにゼロステップを仕掛けるか」と同時に「ディフェンスがどう対応するか」に注目すると一層面白くなります。

ゼロステップを知ると観戦がもっと楽しくなる

バスケットボールのゼロステップは、日本でも2018年に導入された新ルールです。

一見すると難解で、トラベリングとの違いが分かりにくいと感じる方もいるでしょう。

しかし、仕組みを理解するとバスケットボール観戦はより楽しくなるはずです。

また、新しいルールを理解することは、ただ試合を楽しむだけでなく、バスケットボールそのものの進化を体感することにもつながります。

ENSPORTS fanでは、バスケットボール観戦をたくさんの方々に楽しんでいただくために、バスケの観戦マナーや観戦初心者のためのルール解説記事なども公開中。そちらぜひチェックしてみてください。