野球の試合では、監督や選手同士がサインをかわすシーンがよくみられます。「どのような意味があるの?」「どんな仕組みなんだろう?」など、気になることもあるはず。 本記事では、野球のサインに関する基礎知識と種類を紹介します。サインの具体例やサイン盗み、サインを使わないケースについても紹介するので、ぜひ参考にしてください。

野球のサインとは

野球におけるサインの役割と仕組みを紹介します。野球観戦を楽しむための基礎知識として、チェックしておきましょう。

戦術を伝えるための方法

野球のサインとは、指示を暗号化して動作にしたものです。理解しているもの同士で情報を共有でき、相手チームに知られることなく戦術を伝えられます。

サインでミスが発生すれば、ヒットエンドランなどの作戦が失敗することも。戦術・球種の多様化やサイン盗みの対策のため、日本プロ野球(NPB)やメジャーリーグ(MLB)ではサインが複雑化しています。

サインの基本的な仕組み

野球におけるサインは、以下のように使用されます。

  • 監督やコーチがバッター(打者)やランナー(走者)にサインを出して作戦を伝達する
  • キャッチャー(捕手)がサインを出してピッチャー(投手)に球種やコースを指示する
  • キャッチャーを通じてベンチからの守備サインを守備陣に伝達する

サインを受け取った選手は、アンサー(返事)を返さなければいけません。帽子やベルトをつまむなど、特定の動作でサインを理解した意思表示が必要です。

ちなみに、サインを取り消すときのサインも決められています。更に相手を惑わせたい、もしくはサインの出し方を間違えて取り消したい場合などにも有効です。

野球におけるサインの種類

野球で使用されるサインの種類をまとめました。それぞれ使用シーンや仕組みが異なるので、確認しておきましょう。

フラッシュサイン

フラッシュサインとは、少年野球や中学野球で使用されるシンプルなサインです。身体の一部を触る、特定の動きをするなど、一つの動作と指示を紐づける仕組み。サインの意味と動作はチームによって異なりますが、たとえば以下のように割り当てます。

  • 帽子のつばを触るとバント
  • 左肘を触ると盗塁
  • 耳を触るとヒットエンドラン

フラッシュサインはわかりやすく伝わりやすい一方で、相手チームに解読されやすいデメリットがあります。高校野球やプロ野球では、基本的に使用されません。

ブロックサイン

ブロックサインは複雑化されたサインで、ダミーを入れることで解読を防止しています。キーとなる動きがあり、キーの動きをしたあとの◯番目後がサインになっています。

たとえばブロックサインが、以下のように決められていたとします。

キー帽子のツバ
発動条件キーから2番目
耳を触るヒットエンドラン
口を触るバント

帽子・口・耳・胸の順番で体に触れた場合、サインが示しているのは耳で、意味は「ヒットエンドラン」です。耳・帽子・胸・口のとき、サインが意味するのは「バント」となります。

複雑で敵チームにバレにくいため、プロ野球や高校野球ではブロックサインが使われます。ブロックサインの解読対策のため、イニングごとにキーの箇所を変えることも。

ただし、複雑なぶん味方チームが見逃しやすいため、サインミスが発生することも少なくありません。

投球サイン

投球サインは、キャッチャーがピッチャーに指示するときに使用します。腕を触る場所や指の本数で、コースや球種を伝達する仕組みです。

ピッチャーごとにサインが作成されていて、同じ動作でもそれぞれ意味は異なります。同じ投手であっても、試合の途中でサインのパターンを変更することは少なくありません。

野球におけるサインの具体例

野球では、各チームごとにさまざまなサインを作成しています。投球・攻撃・守備にわけて、サインの具体例をまとめました。

投球サイン

キャッチャーは、ピッチャーが投球するときに以下のようなサインをだします。

  • 球種
  • コース(インコース/アウトコース)
  • 高さ
  • ランナーへの牽制球

ピッチャーは頷くことでサインを受け取ったことを示し、横にふることで拒否を示します。サインを見るとき禁止されている動作(反則投球)があった場合は、ボークなどのペナルティの対象です。

攻撃サイン

攻撃サインの例は以下の通りです。

  • 打て
  • 待て
  • バント
  • 盗塁
  • エンドラン
  • 右打ち
  • 進塁打

上記はあくまで一例なので、チームによってはさらに複雑なサインがあることも。たとえば同じバントでも、セーフティーバントやバスター、プッシュバントなど、種類ごとにサインを用意しているケースがあります。

高校野球などのアマチュア野球は監督が直接、プロ野球はサード(三塁)コーチを経由して攻撃のサインを伝えるのが一般的です。

守備サイン

守備サインは種類が多く、2つに分類できます。

  • 牽制の指示(ショート・セカンドからピッチャーへ)
  • 守備位置の指示(キャッチャーから各野手へ)

守備ではチームプレーが重要です。サインミスは失点につながりやすいため、1人でもアンサーが返ってきていない場合はサインを取り消すことも少なくありません。

攻撃サインより複雑かつ伝達の難易度が高いため、少年野球や中学野球では声がけで指示するのが一般的です。

野球におけるサイン盗みとは

野球におけるサイン盗みとは、相手チームのサインを盗む行為のこと。戦術を盗むことで試合を有利に進められるため、アンフェアであると問題視されています。

日本プロ野球のサイン盗み

日本プロ野球では、「二塁ランナーやベースコーチがサインを盗んで伝達する」のがサイン盗みの定義です。戦術の一つとして考えられていた時代もありましたが、時代の変化とともに規則が厳格化。2009年にはサイン盗みが禁止行為とされました。

また、グラウンド外からサインの情報を得た場合は、サイン盗みではなくスパイ行為と定義されており、1999年に禁止となっています。

なお、日本の高校野球でも、フェアプレーの精神に反するとしてサイン盗みは禁止されています。

メジャーリーグのサイン盗み

メジャーリーグでは、バッターがキャッチャーの出すサインを覗き込むことは禁止です。

一方で、サードコーチから盗むことや、二塁ランナーがキャッチャーから盗むことは認められています。そのためサインを出す側が、サイン盗み対策を講じなければいけません。

2019年には、ヒューストン・アストロズによるカメラを不正に使用したサイン盗みが大きな問題になりました。監督の解任や球団への罰金など、さまざま処分が下っています。外野席で撮影したビデオカメラの映像を確認して、ゴミ箱を叩くなどの方法で、バッターに次の球種を伝えていました。

野球でサインを使わないケース

戦術を伝えるのに必須のサインですが、使用されないケースも。ノーサインとピッチコムについて解説します。

ノーサイン

ノーサインとは、監督がサインを出さない野球のことです。選手が自主的に戦術を考えて、お互いにコミュニケーションをとりながらプレーします。

自らが考えて動くことで、能動的に試合を展開できることがメリットです。日本プロ野球やメジャーリーグにおいてノーサイン野球をすることはまずありませんが、高校野球では取り入れているチームもあります。

ピッチコム

ピッチコムとは、サインを交換するときに使用する機械です。メジャーリーグでは、2022年から導入が可能になりました。使用が義務付けられているわけではありませんが、導入するチームは増えてきています。

腕につけた発信機のボタンを押して、受信機を持った選手に音声で指示を伝達する仕組みです。1回目のボタンで球種、2回目のボタンでコースを伝えられます。ピッチコムの導入によって動作によるサインが不要になり、サイン盗みを防止できるようになりました。

野球観戦ではサインに注目しよう

野球ではサインを使用することで、相手選手にバレないように戦術を伝えられます。日本プロ野球やメジャーリーグで使用されるブロックサインは複雑で、まるで暗号のようです。

複雑なサインを解読することは困難ですが、想像するのは楽しいはず。野球観戦をするときは、ぜひ監督や選手がだすサインに注目してください。

ENSPORTS fanでは、野球観戦をたくさんの方々に楽しんでいただくために、観戦マナーや観戦初心者のためのルール解説記事なども公開中。そちらぜひチェックしてみてください。