サッカーのゴールキーパーの役割

ゴールキーパーは、手の使用が禁じられているサッカーにおいて、唯一手の使えるプレーヤー。体全体を使って味方のゴールを守る守護神です。

フィールドの一番後ろから味方のポジションを俯瞰できるため、味方へのコーチングの役割も担っています。さらにディフェンダーのポジションを修正したりと、ディフェンス時には司令塔の役割も果たすのです。

オフェンス時の役割と動き

ゴールキーパーがビルドアップに参加するのは、現代サッカーでは当たり前になってきました。

ゴールエリアからディフェンダーやミッドフィルダーにパスをつなぎ、攻撃を組み立てます。相手がパスカットを狙って距離を詰めてきた時には、ロングキックで一気に前線に展開して、味方の攻撃を活性化させます。

ボールキャッチした時は、パントキックやロングスローで味方に鋭いパスを供給。相手守備陣のスキをつくカウンターの起点にもなるのです。

ディフェンス時の役割と動き

ディフェンス時のゴールキーパーには、的確な状況判断が求められます。

コーナーキックやクロスといった高いボールに対しては、シュートを打たれる前にボールをクリアしなくてはいけません。

スルーパスで味方ディフェンダーが裏を取られた時には、空いたスペースをカバーする動きも求められます。どちらの場合も判断に迷うと、相手にシュートを打たれ、失点に繋がります。

しかし前に出過ぎると肝心のゴールマウスが無人になってしまうため、「前に飛び出すか?それとも味方の戻りを待つか?」など、得点状況や敵味方の位置、相手選手の足の速さといった要素を瞬時に把握し、行動に移すための状況判断が欠かせません。

サッカーのゴールキーパーに求められる能力

背の高さや手の長さなどの身体的特徴や、ボールへの反応力が備わっていることは優秀なゴールキーパーの最低条件です。

しかし一流と呼ばれるゴールキーパーには、さらにセービング能力とコーチング能力、精神力の3つの能力に長けている傾向にあります。

セービング能力

セービング能力とは、相手のシュートをはじき出す能力のこと。プロサッカー選手のシュートは、時速100㎞を超え、中には200kmを超える選手もいるほど強力です。

20~30mほどの近い距離から放たれるシュートは、非常に強力。せっかくシュートを防いでも、扱い方を間違えると、後ろにボールは転がり失点してしまいます。

また防いだボールが相手オフェンスの目の前に転がってしまい、簡単にゴールされるケースも少なくありません。

そのためシュートを防ぐことはもちろん、「防いだボールをどこに転がすか」までシミュレーションして守る必要があるのです。

特に雨に濡れたフィールドでは、ロングシュートを積極的に打ちゴールキーパーのミスを誘うのは定石の戦法となっています。

コーチング能力

コーチング能力とは、状況に合わせて的確な指示を味方にだせる能力です。

たとえばディフェンダーの死角から敵が上がってきていれば、「9番マーク!」と指示。サイドバックが下がっていて、敵へのプレッシャーが弱い場合は、「もっと上がれ」と伝えます。

味方への指示は監督やコーチだけが行うイメージがあるかもしれませんが、試合中の歓声や応援にかき消されて監督らの指示が届かない場合もあるのです。

またゴールキーパーは、最後列からフィールド全体をまとめて俯瞰できるポジションです。

そのためゴールキーパーは、「フィールドの監督」としてチーム全体に指示を出す役割も期待されています。

精神力

些細なミスが失点に繋がってしまうゴールキーパーには、強靭な精神力が欠かせません。ゴールキーパーに求められる精神力とは、ミスや失点をいつまでも引きずらないことです。

ワールドカップ予選や優勝が決まるような大事な試合で、失点して気落ちするチームメイトを鼓舞するゴールキーパーを見たことがないでしょうか。

ゴールを守れなかったキーパーが一番悔しい気持ちであるはずなのに、両手を叩き大声を出して、「まだこれからだ」と味方を励ましています。

ミスを引きずるチームは、その後も簡単に失点を繰り返します。失点を重ねれば、当然その分勝利は遠ざかりますよね。

悔しさをバネに、チーム全体を考えて味方を鼓舞できるゴールキーパーは一流といえます。

ゴールキーパーの有名サッカー選手を紹介

高い身長や長い手足といった体格に恵まれており、高い技術を持っているゴールキーパーは、日本のJリーグや世界のトップリーグで活躍しています。

ここでは5人の有名サッカー選手をご紹介します。

  • 川島永嗣
  • 川口能活
  • ジャンルイジ・ブッフォン
  • ジャンルイジ・ドンナルンマ
  • 白石健司

日本 川島永嗣

フランスのRCストラスブールに所属するゴールキーパーです。身長は185㎝で、ジャンプ力といった身体能力にも恵まれています。

2008年から日本代表の正ゴールキーパーを任され、2010年、2014年、2018年と3度のワールドカップに出場している日本代表の守護神です。

闘志を前面に出し、ピンチでも味方を鼓舞するプレイスタイルは、日本人サポーターから高い支持を受けました。さらにはペナルティキックで相手を止める能力にも長けており、絶体絶命の日本代表を何度も救っています。

その高い精神力が証明されたのは、2018年ワールドカップのポーランド戦。前のセネガル戦、その前のコロンビア戦の失点をサポーターやサッカー解説者に非難され、「スタメンを辞退するのでは?」と考えられていました。しかしポーランド戦にはキャプテンマークを巻いて登場したのです。

試合では、相手エースストライカーのヘディングシュートを右手だけで止めるなど、驚異的なビックセーブを連発。日本のゴールを守り続け、決勝ラウンド進出に貢献しました。

結果として2018年のワールドカップでは、ゴールキーパーセーブ率ランキングで3位の好成績を残しました。

日本 川口能活

2018年に現役を引退した、元日本代表のゴールキーパー。日本代表としてアトランタ五輪、1998年ワールドカップ、2006年ワールドカップなど、複数の大会に正ゴールキーパーとして出場しました。

身長180㎝とゴールキーパーとして小柄ながら、優れた先読みと思い切りの良さでゴールを守るのが特徴的なプレイスタイル。アトランタオリンピックでブラジルを0点に抑えて勝利した試合は、マイアミの奇跡と呼ばれ、今でもサッカーファンの語り草となっています。

パントキックやゴールキックといったロングキックも得意としており、守備だけでなく攻撃でもチームを活性化していました。

相手の攻撃時はディフェンダーとともにゴールを守り、ボールキャッチした際には自身のロングキックでカウンターの起点になるプレイスタイルは、ジャイアントキリングの立役者として、何度も称賛を浴びています。

海外 ジャンルイジ・ブッフォン

約20年間に渡り、イタリアの正ゴールキーパーを務めた伝説的ゴールキーパーです。

2006年のワールドカップでは、正ゴールキーパーとしてイタリア代表のゴールを守り、イタリアのワールドカップ優勝に大きく貢献しました。

192cmの大柄な体格に加え、セービング能力にコーチング能力といった一流ゴールキーパーの資質も備えていますが、頑丈な体も大きな特徴です。

恵まれた体格を活かし、体全体でゴールマウスを守るプレイスタイルであるため、相手フォワードとの接触は避けられません。

激突してもボールは離さず、相手に向かっていく闘争心あふれるプレイスタイルは、イタリアだけでなく世界中のファンを魅了しました。

海外 ジャンルイジ・ドンナルンマ

6年間イタリアの名門ACミランでプレイした後、フランスのビッククラブであるパリ・サンジェルマンへ移籍し、活躍している現役選手です。2016年からは、イタリアの正ゴールキーパーを務めています。

2018年、イタリアの名門クラブACミランにて弱冠18歳で年俸600万ユーロの大型契約を結ぶなど、若い時から期待されたゴールキーパーです。

196cmの長身を活かし、ゴール枠内に飛んできたどんなシュートにも反応します。ACミランにおける暗黒期と呼ばれた時期に、何度もミランを危機から救った選手です。

今後さらに経験を積むことで、先輩のブッフォンを超えるゴールキーパーになるかもしれません。

シュート! 白石健二(しらいし けんじ)

掛川高校の正ゴールキーパーが、白石健二。

相手のどんなシュートも止めてしまう必殺座「ムーンサルトセーブ」を使い、スーバーセーブを連発します。

174㎝とゴールキーパーとしてはかなり低身長ですが、高い身体能力と闘志でゴールマウスを守るのが特徴。たとえば至近距離のシュートに体を投げ出して顔面ブロックしたり、負けているチームメイトにゲキを入れたりと、チームの精神的支柱でもありました。

田仲・平松との3人での必殺技「トリプルカウンターアタック」は、白石からのパントキックが起点になっており、数々の強豪チームを撃破するのに大きく貢献しました。

サッカーのゴールキーパーは最後の砦である

サッカーのゴールキーパーは、まさに最後の砦です。

ディフェンダー陣が相手に抜かれてしまっても、ゴールマウスにはゴールキーパーが立ちはだかります。ペナルティキックでは、味方やファンの想いを背負ってゴールマウスを守ります。

負けている試合でも仲間を励まし、メンタル面でもチームを支えるなど、ゴールキーパーはプレイにおいてもチームにおいても、欠かせない存在なのです。