野球におけるドラフト会議は、球団が新人との交渉権を獲得するための制度です。各球団に新しい戦力が加わる重要な会議なので、基本的な仕組みをチェックしておきましょう。 本記事では、野球におけるドラフト会議の流れと仕組みを解説します。現役ドラフトの概要やドラフト会議に関するよくある質問とあわせて紹介するので、ぜひ参考にしてください。

野球のドラフト会議とは

野球におけるドラフト会議の基礎知識を紹介します。なぜドラフト会議をするのか、目的とあわせて解説するので気になる方はチェックしておきましょう。

新人獲得のための会議

ドラフト会議とは、新人選手の入団交渉権を獲得するための会議のこと。日本プロ野球では、「新人選手選択規定」が正式名称です。

ドラフト会議は毎年10月に行われます。有望な選手には指名が集中することも多く、指名順位やドラフト1位の選手には特に高い関心が集まるのが毎年の恒例です。

12球団の戦力を均衡させるのが目的

ドラフト会議の目的は、日本プロ野球における12球団の戦力を拮抗させることです。直接オファーの場合、資金力や人気のある球団が有利なので、将来有望な選手が特定の球団に集中してしまいます。

他の球団との戦力差が広がり日本シリーズの優勝チームがほぼ確定した状態になると、試合での緊張感やドラマが失われ、プロ野球全体の人気が落ちかねません。

ドラフト会議を行うことで、各球団が公平な方法で選手との交渉権を獲得できるため、戦力を分散させることが可能になっています。

野球におけるドラフト会議の流れと仕組み

野球におけるドラフト会議の流れをまとめました。各球団がどのように交渉権を獲得するのか、基本の仕組みを解説します。

プロ志願届を受け付ける

各球団で指名される選手は、プロ志願届を出した新人から選ばれます。以下のいずれかの条件を満たした選手が対象です。

  • 日本国籍の保有者
  • 日本の中学・高校・大学もしくはそれに値する学校への在籍経験がある

学校に在籍中の場合は、原則として翌年3月に卒業見込みの選手が対象になります。高校は卒業見込みの選手、大学は4年間在籍した選手が対象となるのが基本です。

なお、過去に日本プロ野球の球団に入団していた経験がある選手は、ドラフト会議に参加できません。

一巡目は各球団がほしい選手を指名する

一巡目は、志願者リストから各球団が1人ずつ欲しい選手を指名します。すべての球団が希望の選手を選び、指名がかぶらなければ交渉権を獲得できます。

それから入団交渉に入り、選手と球団の双方が合意すれば入団が決定する仕組みです。他の球団と指名が重複した場合は入札抽選を行い、当選した球団が交渉権を獲得します。

交渉権を逃がしたら再度希望する選手を選択する

一巡目で入札抽選に外れた場合は、外れた球団のみで再度入札抽選を行います。

それまでに指名や抽選の対象になっていない選手を指名して、重複したらまた抽選で決めるのが基本の流れです。このようにすべての球団で一巡目の指名選手が確定するまで、指名と抽選を繰り返します。

ニ巡目はウェーバー制で選手を指名する

2巡目は、ウェーバー制のシステムで選手を指名します。

ウェーバー制とは、その年の各リーグの結果をもとに下位の球団から順番に指名できるシステムです。指名すれば独占交渉権を獲得できるため、抽選は発生しません。

低順位の球団の指名を優先させ、戦力の均衡化を図ることが狙いです。

三巡目は逆ウェーバー制で選手を指名する

ドラフト会議の三巡目では、リーグ結果の上位の球団から順番に選手を指名する逆ウェーバー制が採用されています。

ニ巡目のウェーバー制とは逆に、優勝した球団から選手を選択可能です。ウェーバー制と同様、独占交渉権を獲得できるので、抽選は行いません。

4週目以降はウェーバー制と逆ウェーバー制を交互に行う

4巡目以降は、ウェーバー制と逆ウェーバー制で交互に指名します。偶数がウェーバー制で、奇数が逆ウェーバー制です。これをすべての球団が指名終了を宣言するまで続けます。

原則として指名できる人数は1チーム10人までですが、指名選手の合計が120人に達していなければ続けて指名が可能です。120人に到達した時点で宣言していない球団があっても、ドラフト会議は終了します。

育成ドラフト会議を開催する

ドラフト会議が終わったあとは、育成目的の選手を指名する育成ドラフト会議が行われます。将来性のある新人を獲得して、球団で強い選手に育てることが目的です。

育成選手は育成契約を結ぶルールなので、正式な登録選手ではありません。そのため一軍公式戦には出場できず、出場できる試合は二軍に限られます。育成ドラフト出身からスター選手が生まれることもあるので、ドラフト会議とあわせてぜひチェックしてください。

野球における現役ドラフトとは

日本プロ野球では、通常のドラフト会議のほかに現役ドラフトを行っています。概要と目的について、わかりやすく解説します。

他チームの現役選手を獲得できる制度

現役ドラフトとは、他チームに所属している現役選手を指名して獲得できる制度です。各球団は、必ず1名以上を指名しなければいけません。

  1. 各球団が対象となる選手から2人以上選出してリストを提出する
  2. 各球団がリストの中から獲得を希望する選手を選択する
  3. 最も多い票を獲得した球団が1番の指名権を獲得する
  4. 最多得票の球団が重複したときはウエーバー制で指名権を決定する
  5. 指名権を獲得した球団が予備指名を行った選手を指名すれば球団に指名権が移る
  6. 12番目の球団まで上記と同じ手順を繰り返す
  7. 希望した球団だけで1巡目と逆の手順で2巡目の指名を行う

現役ドラフトでは、フリーエージェント権(他の球団と契約交渉できる権利)がなく、年俸5,000万円以下(1名に限り5,000万円以上1億円未満)の選手が対象です。

現役選手にチャンスを与えることが目的

現役ドラフトの目的は、出場機会に恵まれない選手にチャンスを与えることです。各球団がプレーの機会が少ない選手をリストアップして、他の球団に移籍する道を示します。

現役選手の移籍を活性化させることで、出場機会や新しいチャンスにつながるケースも少なくありません。横浜DeNAベイスターズから中日ドラゴンズに移籍した細川成也選手など、現役ドラフトをキッカケに活躍した選手もいます。

プロ野球のドラフト会議に関するよくある質問

プロ野球のドラフト会議に関して、よくある質問をまとめました。疑問を解消するために、ぜひ参考にしてください。

Q1. 選手は交渉権を断れるの?

ドラフト会議で獲得できるのはあくまで交渉権だけなので、入団は拒否できます。ただし、交渉権を断っても、他の球団には入れません。他の球団に入団したい場合は、来年の交渉を待つことになります。

ドラフト指名を4度拒否した藤沢公也選手や、入団を拒否して巨人を希望した元木大介選手が有名です。ただし、入団して活躍すればフリーエージェント権で移籍できる制度があるので、断る選手はほどんどいません。

Q2. ドラフト会議は観戦できる?

野球のドラフト会議は、観戦チケットを購入すれば会場で観戦できます。日程やチケットの購入方法は、日本プロ野球の公式サイトをチェックしましょう。

一部の球団では、食事やトークを楽しめるライブビューイングを開催しています。テレビや配信サービスで生中継も行っているので、ぜひ観戦してみてください。

Q3. ドラフト会議に通らなくてもプロになれる?

ドラフト会議に通らなければ、基本的にはプロ野球選手にはなれません。ただし、外国出身の選手や育成選手など一部の例外は存在します。

昔はドラフトを通さず入団できるドラフト外入団が認められていましたが、1990年に廃止されました。

ドラフト会議の結果に注目しよう

ドラフト会議では、各球団が希望の新人選手を指名して獲得を目指します。抽選など運の要素が絡んでくるため、どの選手がどの球団に入るのかわかりません。

指名順位が高い選手やドラフト1位の選手は注目されますが、下位指名から活躍してスターになった選手もいます。ドラフト会議の結果が球団の今後を左右するので、ぜひ注目してください。

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