野球のキャッチャーは、重要な役割があるポジションです。縁の下の力持ちといわれていて、そのプレーが勝敗を左右することもあります。 本記事では、キャッチャーの基礎知識と役割をまとめました。キャッチャーに必要な能力や関連するルールも紹介するので、野球観戦にぜひ役立ててください。

野球のキャッチャーとは

野球のキャッチャー(捕手)について、基本的な知識を紹介します。装着する防具や、女房役と呼ばれる理由とあわせて解説するのでチェックしておきましょう。

ピッチャーの球を捕るポジション

キャッチャーは、守備のときピッチャー(投手)が投げた球を受けるポジションです。特殊な形状のグローブ(キャッチャーミット)を装着しています。

守備についたときに付与される守備番号は2番。グラウンドを見渡せる位置で、ピッチャーと正対しながらプレーします。右利きの選手がなることが多く、左利きはほとんどいません。

防具を装着する

投球を受けるキャッチャーは危険が多く、投げたボールやファウルチップが当たることもあります。クロスプレーによる衝突もあるため、体を守るための防具が必要です。

  • ヘルメット(頭)
  • マスク(顔)
  • プロテクター(胴体)
  • レガース(脚)

体を保護して怪我を防止するために、4種類のプロテクターを装着します。セットでつけることで体の広い範囲をカバーでき、より安全なプレーが可能です。

女房役と呼ばれている

キャッチャーは、ピッチャーとバッテリーを組むポジションです。ピッチャーを支える姿が夫を支える妻を連想させることから、「女房役」とも呼ばれています。

精神面や技術面を支える存在として、ピッチャーの力を引き出すのも大事な役割の一つ。

正捕手のことを「正妻」と呼ぶこともあります。野球では「女房役」や「正妻」は一般的な用語ですが、現在では古い表現になりつつあるという声も。

野球におけるキャッチャーの役割

野球のキャッチャーは、非常に多くの役割があるポジションです。どのような役割があるのか、くわしく紹介します。

ピッチャーの球を受ける

キャッチャーは、ピッチャーが投げたボールを確実に捕球しなければいけません。ミットの芯で受けていい音を鳴らすことは、ピッチャーのモチベーションアップにつながります。

ピッチャーが投げにくくなるので、ミットの位置を動かしてはいけません。逸れた球をブロックしたり、ワンバウンドしたボールを体で止めたりと、状況に応じたプレーが求められます。

リード(配給)をする

野球において、ピッチャーを導くリードや投球を組み立てる配球はとても重要です。コースや球種など戦略を、手元のサインでピッチャーに伝えます。

ピッチャーの持ち玉やバッター(打者)のクセ・得意コース、試合展開をふまえて、サインを出さなければいけません。バッターを打ち取ることができるかは、キャッチャーの判断によって大きく左右されます。

守備位置の指示出し

キャッチャーは、グラウンドが見渡せる位置でプレーできる唯一のポジションです。ポジショニングの指示出しをすることから、守備の要といわれています。

バッターの打撃傾向やランナー(走者)の有無によって、前衛守備やゲッツーシフトなどを判断します。打撃が飛んだときは、ボールをどの塁に送球すべきか指示することも。

ホームベースを守る

野球では、ランナーがホームベースにかえると攻撃側に得点が入ります。ホームベースを守り、得点を阻止することはキャッチャーの重要な役割です。

ランナーがホームベースを踏む前に周囲に飛んだボールを処理すれば、アウトになります。ランナーと野手が接触するクロスプレーが発生しやすく、体当たりされることもあるため、危険なポジションと言えるでしょう。

ランナーの盗塁を阻止する

ランナーが二塁もしくは三塁への盗塁を狙っているとき、受けた球を内野手に投げてアウトにします。リードが大きいランナーに牽制球を投げる駆け引きは、見どころの一つです。

ピッチャーにサインを出して、牽制球を指示することも。立ち位置や重心で盗塁を狙っているか判断し、キャッチャーと野手にサインを出して牽制球を成功させます。

ベースカバーに入る

塁(ベース)で捕球が逸れたときに備えて、ベースカバーをおこなうのもキャッチャーの役目。捕球ミスによるランナーの進塁を防止します。キャッチャーが入るのは、主に一塁のベースカバーです。

キャッチャーは、一塁のベースカバーにいくかホームを守るか、ランナーの位置やアウトカウントに応じた判断しなければなりません。三塁側にバントをされたときなど、三塁のベースカバーに入ることもあります。

野球のキャッチャーに必要な能力

多くの役割がある野球のキャッチャーには、さまざまな能力が求められます。必要とされる6つの能力をまとめました。

キャッチング

キャッチングとは、投球を確実に捕球するための能力です。ボールがかまえている位置にボールがこないこともあり、暴投にも対応しなければいけません。

ストライクゾーンギリギリのボールを、動作や体制でストライクに見せる「フレーミング」という技術も存在します。捕球後にミットを動かさない技術があれば、球審にストライクと判定される可能性が高まるため、近年注目されているテクニックです。

右投げ

左投げの選手はキャッチャーに向かないため、右投げが一般的です。左投げが少ないのは、以下のような理由があります。

  • 一塁にいるランナーが見えにくい
  • 右バッターが邪魔で二塁に送球しにくい
  • 三塁に送球するとき体をねじることになる
  • クロスプレーのときランナーをタッチしにくい

プレーにタイムラグが生まれるため、左利きのキャッチャーは不利だといわれます。そのため左投げのキャッチャーをプロ野球で見ることは、まずありません。

スローイング

スローイングは、野手がボールを投げる行為全般をさします。ランナーを確実にアウトにするために、肩の強さや高いコントロール力が必要です。ホームベースから二塁や三塁まで、ノーバウンドかつ正確に投げることが求められます。

分析力と観察力

キャッチャーは、バッターを分析してピッチャーにサインを出します。相手バッターが投球に対して、どのような反応を示すのか観察し、ピッチャーに球種やコースの指示出しをおこないます。

記憶力

キャッチャーは、相手バッターの情報を覚えておく必要があります。得意なコースやスイングの特徴、初球に投げた球種など、バッターごとの情報をプレーしながら覚えていきます。

バッターに対して同じパターンの配球を繰り返すと、クセを見抜かれることになりかねません。各バッターに最適な配球を組み立てるために、記憶力は必要不可欠といえます。

リーダーシップ

守備の要であるキャッチャーは、リーダーシップが必要とされています。リードでキャッチャーを引っ張ったり、守備陣に指示を出したりするために、信頼関係を日頃から構築していくのが重要です。

監督をサポートし、チームの戦略やコミュニケーションの中心となる姿から、第二の監督と呼ばれることも。統率力や指導力に優れた選手は、優秀なキャッチャーになれます。

キャッチャーに関連する野球のルール

キャッチャーに関連する野球のルールをまとめました。守備位置とコリジョンルールについて、わかりやすく解説していきます。

守備位置のルール

キャッチャーボックスの中なら、どの位置で構えてもOKです。ただし、バットに触れるなどバッターの邪魔になる行為をすると、打撃妨害となります。

ピッチャーの手からボールが離れる前にキャッチャーボックスから足を出すのは、キャッチャーボークです。反則行為となり、すべてのランナーに安全進塁権が与えられます。

コリジョンルール

コリジョンルールは、ホームベースでの衝突(コリジョン)を防ぐためのルールです。日本プロ野球では、コリジョンルールで下記を禁止しています。

ルールペナルティ
ボールを保持していない捕手が得点しようとする走者の走路を邪魔すること走者はセーフ
走者が走路を塞いでいない捕手もしくは野手に接触しようと走路を外れること走者はアウト他の走者は接触時点の塁に戻る

過激なクロスプレーによる負傷者が続いたことから、メジャーリーグや日本プロ野球で採用されました。リクエスト制度の対象であり、ビデオ判定によって判定がくつがえることがあります。

野球観戦ではキャッチャーの役割とプレーに注目しよう

キャッチャーは、第二の監督と呼ばれる重要なポジションです。戦略面で貢献することが多く、ピッチャーやチームをしっかりと支えています。

野球の世界では、「強いチームに名キャッチャーあり」といわれることも。キャッチャーの役割やプレーに注目すれば、野球観戦がより楽しくなるはずです。

ENSPORTS fanでは、野球観戦をたくさんの方々に楽しんでいただくために、観戦マナーや観戦初心者のためのルール解説記事なども公開中。そちらぜひチェックしてみてください。