野球の反則球とは

野球の反則球について基礎知識を解説します。混同されやすい半速球との違いも、あわせてチェックしておきましょう。
禁止されているピッチャーの動作
野球の反則球(反則投球)とは、ルールで禁止されているピッチャー(投手)の動作のことです。「イリーガルピッチ」や「不正投球」とも呼ばれます。
反則球の主な目的は、ボールへの細工を防止することや、バッター(打者)の不利を防ぐことです。違反があれば審判によってペナルティが宣告されます。
半速球との違いに注意
反則球(はんそくきゅう)と半速球(はんそっきゅう)は、読み方が似ています。どちらも野球中継で聞くことがあり、混同されやすいので注意が必要です。状況をふまえたうえで、どちらを指しているのか判断にしましょう。
ちなみに、半速球は正式な野球用語ではありません。全力の速球と変化球(チェンジアップやカーブなど)との中間にあたる速度の球、もしくは本来の速度や変化に達していない失敗した投球を指すことが多いようです。
野球における反則球の種類

反則球にはどのような行為が該当するのでしょうか。3つに分類して、反則球の種類を紹介します。
規定の投球動作に違反する投球
ピッチャーの投球動作にはルールがあり、違反があれば反則球とされます。該当する投球動作は以下の通りです。
- 投球する手を唇や手につけてボールに触れる
- 投球する手・ボール・クラブに唾液をつける
- グラブ・身体・着衣でボールを摩擦する
- ボールを傷つける
- ボールに異物を付着させる
- 異物を所持したり身体につけたりする
- 打者がバッターボックスにいるとき捕手以外の野手に送球する(走者のアウトを狙うときは除外)
細工があったと判断されれば、ボールを交換して試合が再開します。ただし、ボールを素手で擦るのは反則球ではありません。以前は二段モーション(一度上げた足を上下する・止める)も反則球でしたが、2018年から除外されました。
投手板に触れずに投げた投球
野球のルール上では、投手板(ピッチャーズプレート)に触れた時点でピッチャーとみなされます。そのため必ず投手板を踏んだ状態で投球しなければいけません。触れずに投球すると、反則球に該当します。
クイックピッチ
クイックピッチとは、バッターがかまえていない状態で投球することです。打つのはとても難しく、バッターに直接向かって投げられた場合は危険な状態に陥ることもあります。
また、キャッチャー(捕手)から返球されたあと、直後に投球をすることを「クイックリターンピッチ」といいます。バッターのタイミングをずらすことや、塁上のランナー(走者)にリードさせないことなどが目的で行われる行為です。
「バッターの準備が不十分な状態だった」と判断されれば、クイックリターンピッチもクイックピッチとして反則球と見なされます。
野球における反則球へのペナルティ

反則球があったと判断された場合、審判によってペナルティが宣告されます。状況によってペナルティの内容は異なるので、違いを確認しておきましょう。
ランナーがいなければボール
塁上にランナーがいない場合、ペナルティはボールです。通常はピッチャーの投球がストライクゾーンを通過しなかったときの判定ですが、反則投球の際にも宣告されます。
バッターは4つのボールを宣告されるとフォアボール(四球)となり、一塁まで安全に進塁できます。一塁にランナーがいれば、押し出されて二塁に進塁が可能です。プレーが継続した場合、監督はペナルティよりも結果を活かしたい旨を審判に通告することもできます。
ランナーがいればボーク
反則投球を投げたときランナーがいる状態の場合は、ボークが適用されます。安全進塁権によって、すべてのランナーは一つ先の塁に進むことが可能です。3塁にランナーがいれば得点になります。
バッターが打った場合はプレーが継続されますが、全員が一つ以上の進塁を得られないときはペナルティが適用されるのがルール。その場合はボークとなり、各ランナーは安全進塁権を獲得します。
野球における反則球とボークの違い

野球では、ピッチャーの反則としてボークが宣告されることがあります。反則球と混同しないように、区別する方法を確認しておきましょう。
ボークとは
ボークとは、ピッチャーが投球や塁へ送球するときに発生する反則です。ランナーがいる状態で、以下のような行為があればボークが宣告されます。
- 投球動作を途中で止める
- 偽投(塁に送球する真似)をして実際に送球しなかった
- 自由な足を牽制方向に踏み出さずに牽制した
- 走者のいない塁に送球もしくはその動作を起こした
- 反則投球に該当する行為をした
- バッターと正対する前に投球した
- 投手板に触れることなく投球もしくは関連する動作をした
- セットポジションで完全に静止しなかった
- 走者が塁を離れていないのにその塁に送球するなど遅延行為をした
- ボールを持たずに投手板に触れた・投手板に触れずに投球の真似をした
- 投球姿勢をしたあと投球・送球を除いてボールから一方の手を離した
- 投手板に触れた状態でボールを落とした
- 故意四球においてキャッチャーボックスに両足が入っていない捕手に投球した
ボークは、キャッチャーがバッターや野手を欺いたり、不正に盗塁やヒットエンドランを阻んだりすることを防止するのを目的に定められたルールです。上記の13種類に該当する行為があった場合、攻撃側の各ランナーは安全進塁権を獲得します。
ランナーの有無で区別する
ボークに該当する13種類の行為の中には反則球があります。
ボークかボールになるかは、「ランナーがいる状態かどうか」という点が重要。ランナーがいる状態の場合はボークと判定され、一方でランナーがいない状態だと反則球でボールが適用されます。
野球における反則球以外の反則行為

野球では、反則球以外にもさまざまな反則行為があります。野球観戦の基礎知識として、該当行為とそのペナルティをチェックしておきましょう。
遅延行為・危険球
遅延行為とは、投球間隔が長すぎる、サイン確認に過度に時間をかけるなど、試合を意図的に遅延させるような行為のこと。ピッチャーによる遅延行為は、ボークに該当します。
遅延行為があったと判断されると審判員から警告され、それでも同じような行為が繰り返された場合は、退場処分になります。
危険球は、頭や身体などを狙った危険な投球のこと。投げたピッチャーは退場になります。「選手生命に関わるほどではない」と判断された場合は警告措置がだされ、その後同様の投球があった場合は即退場です。
打撃妨害
打撃妨害とは、守備側の選手がバッターの妨害をしたとき適用される反則です。主にキャッチャーがバッターに触れたときなどに成立します。
プレーが継続しなかったときは、打撃妨害を受けたバッターが一塁に進めます。プレーが継続した場合は、攻撃側に打撃妨害による損失がなければそのまま継続するのがルール。損失があると判断された場合、バッターは一塁に進みます。
守備妨害
守備妨害は、守備をしようとした選手を妨害することです。バッターやランナーなど攻撃側の選手はもちろん、ベースコーチや審判、観客が対象になることもあります。
守備妨害が発生したときは、審判員がボールデッド(一時停止)としたうえで必要な処置がとられます。守備妨害に該当する行為は非常に多く、対象や状況によってペナルティが異なる点には要注意。ルールを簡単に把握しておくと、野球観戦をより楽しめるはずです。
走塁妨害
走塁妨害とは、野手がランナーの走塁を妨害する反則行為です。塁と塁の間に立って塞いだり、進路を妨害したりすると、走塁妨害が宣告されます。
ランナーは、妨害がなければ進めたと判断された塁まで進むことが可能です。ただし、野手がボールを処理中の場合はそちらが優先なので、走塁妨害は適用されません。
野球の反則球を理解してから観戦しよう
野球の反則球とは、禁止されているピッチャーの動作のことです。該当行為があった場合、ランナーがいなければボールが、いればボークが宣告されます。
反則球の基礎知識を身に着けていれば、発生したときの判定にも納得できるはず。野球のルールにくわしくなることで、より新しい視点で試合観戦を楽しめるようになるでしょう。
ENSPORTS fanでは、野球観戦をたくさんの方々に楽しんでいただくために、観戦マナーや観戦初心者のためのルール解説記事なども公開中。そちらぜひチェックしてみてください。