サッカー日本代表チームにとって、監督は非常に重要な存在。しかし、なぜそれほどまでに重要なのかご存知ですか? 本記事では、サッカー日本代表監督の役割や監督になる方法、歴代監督の戦術スタイルなどもご紹介します。

なぜ「日本代表の監督」は特別なのか

Jリーグの各クラブチームにも監督はいます。しかし「日本代表」の監督は、その中でも特別な存在。

代表チームは、Jリーグはもちろん海外のチームから選ばれたトップレベルの選手で構成されます。そして、W杯やアジアカップなどの大きな国際大会で戦うために、限られた時間の中でチームをまとめ、最高のパフォーマンスを引き出すのが「監督」という大きな存在なのです。

だからこそ、日本代表の監督はファンやメディアからも注目が集まりやすくなっています。

サッカー日本代表の監督の役割とは

サッカー日本代表の監督にはさまざまな役割があります。どのような役割があるのか、くわしく紹介します。

チーム戦術の立案と実行

サッカー日本代表の監督は、チーム全体の戦術を決定する役割があります。サッカーの戦術は多種多様で、相手チームや状況にあわせて柔軟に使い分けることが重要です。

交代枠の使い方やフォーメーションの変更など、監督の判断がチームの勝敗を左右することも。名将と呼ばれる監督によって、チームの勝率が劇的にあがることは少なくありません。監督ごとの戦術スタイルが生み出すチームの特色を理解することで、サッカー観戦がさらに楽しめます。

選手の選考と育成

サッカー日本代表の選手は監督が選考します。選考基準は監督によってさまざまで、意外だと感じる選手がいることもあるはずです。

選考された選手から、監督が理想とするチームが見えてくるかもしれません。監督が練習を見ることも多く、育成にも深く関わっています。

情報収集と分析

情報収集と分析によってチームを強化するのは、サッカー日本代表監督の重要な役割です。アナリスト(分析官)やコーチと情報を共有して、試合や練習の分析やチーム戦術の立案をおこないます。

試合映像や選手のデータ、コーチからの報告など、あらゆる情報を収集して参考に。事前の情報収集や分析が試合の勝敗を左右することもあるため、とても重要な役割といえます。

メディア対応とチームの顔としての役割

試合前後の記者会見やファンへのメッセージも監督の大切な役割のひとつ。

サッカーの試合でスーツを着用する監督が多いのは、メディア対応のためとも言われています。

日本代表の「顔」としてチームを代表して話す立場でもあるのです。

サッカー日本代表の監督になる方法

サッカー日本代表監督になるため条件は、たった2つ。しかし、この条件を満たすのは簡単なことではありません。

この章では、サッカー日本代表の監督になる方法を解説します。

S級ライセンスを取得する

サッカー日本代表の監督になるためには、S級ライセンスを取得する必要があります。日本サッカー協会では指導者免許制度を定めていて、その最上位がS級ライセンスです。

取得して初めて、Jリーグのトップチームや日本代表の監督になることが可能に。実技実践と面談への合格やS級養成講習会の受講が必須であり、狭き門といえます。

監督としての輝かしい経歴を積む

サッカー日本代表の監督は、それまでの実績が重視されます。日本代表を率いるにあたってふさわしい人物なのかは、重要な選考基準の一つです。

強豪クラブでの指導歴など高いレベルの指導歴があれば、選ばれやすくなる傾向があります。なお、外国人監督の場合は、「日本のよさを活かせるか」「アジアへの理解があるか」なども重要な要素です。

サッカーにおける「いい監督」とはどんな人?

現在のサッカー日本代表監督ってどんな人?

現在のサッカー日本代表監督は森保一(もりやすはじめ)さんです。

この章では、森保ジャパンの基本情報と戦術スタイルをまとめました。

森保一監督の基本情報

選手歴マツダサッカークラブ
サンフレッチェ広島
京都パープルサンガ
サンフレッチェ広島
ベガルタ仙台
※J1リーグ:293試合15得点
※J1リーグカップ:49試合6得点※日本代表:35試合1得点
指導歴サンフレッチェ広島監督
東京オリンピック世代・日本代表監督
日本代表監督
※J1通算187試合92勝40分け55敗

元日本代表のサッカー選手で、現役時代のポジションはMF(ミッドフィールダー)です。サンフレッチェ広島を3回のリーグ優勝に導いた実績があり、2018年7月に日本代表監督に就任しました。

東京オリンピックではベスト4まで進んだ実績があり、AFCアジアカップでは通算で4回の優勝を果たしています。

2022年のワールドカップカタール大会では、ベスト16(9位)に導きました。ちなみに、現在の年俸は1億7,000万円といわれています。

森保一監督の戦術スタイル

組織を重視しながら個人を活かすのが、森保一監督の戦術スタイルです。選手の普段のプレーをみたうえで、取り入れられる部分は柔軟に取り入れています。

準備と持続性を重視しつつ、ときには大胆な采配をすることが特徴です。現在は3バックシステムを採用していて、以前より攻撃の幅が広がりました。超攻撃的な布陣により、たしかな結果を出しています。

歴代のサッカー日本代表監督とは

代表的な歴代のサッカー日本代表監督を紹介します。それぞれの特徴と戦績を、まとめました。

フィリップ・トルシエ

フランス出身の監督で、2002年ワールドカップ日韓大会のとき初めての決勝トーナメント進出に導きました。A代表と五輪世代の代表監督を兼任しています。

3人のDFがフラットに並び、最終ラインを上げ下げするフラット3が印象的です。相手の攻撃を制限しつつ、オフサイドにしたりボールを奪取したりする攻撃的な守備を可能にしました。

ジーコ

ブラジル出身の監督で、2004年にはAFCアジアカップ中国で優勝しています。2005年ワールドカップドイツ大会では、アジア地区予選を突破して本大会出場に導きました。

選手の能力を信頼して、個々の力を最大限発揮させる戦術スタイルが特徴です。メンバーを固定して連携を深め、戦術的な縛りを最小限にすことで結果をだしました。

イビチャ・オシム

ユーゴスラビア出身で、オシム語録と呼ばれる言動に注目が集まりました。「守備的な選手はいるのか?水を運ぶ選手も必要だ」「勇気はお金では買えない」といった、言葉が印象に残ります。

AFCアジアカップの結果は4位。マンツーマンの守備や切り替えの速さ、多大な運動量によって、格上相手でも攻撃的に攻める戦術を特徴としています。

岡田武史

1998年のワールドカップフランス大会の最終予選中にコーチから昇格して、初の出場に導きました。さらに2007年から2度目の監督に就任し、ワールドカップアフリカ大会では、自国開催以外で初めての決勝トーナメント進出を果たしています。

ラクビーにおける大西理論の「接近・展開・連続」を応用。素早いパスで相手を引き付けたうえで空いた逆サイドにボールを送り、守備を崩す攻撃的サッカーが特徴です。

アルベルト・ザッケローニ

2011年に日本代表をAFCアジアカップ優勝に導いたイタリア出身の監督です。2014年ワールドカップブラジル大会では、予選を世界最速で突破しましたが、1次リーグは突破できませんでした。

日本人の俊敏性や勤勉性を活かした、正確なパス回しで攻め込むサッカーが特徴です。ボールを保持しつつ、コンビネーションプレーでゴールに向かっていく攻撃的な戦術スタイルをとっていました。

ヴァイッド・ハリルホジッチ

ボスニア・ヘルツェゴビナ出身の監督で、2018年ワールドカップロシア大会の出場権を獲得しました。選手との信頼関係が薄れたなどの理由によって、大会直前に解任されています。

ハリルホジッチ監督が選手に求めたのはデュエルです。1対1の攻防によってボールを奪うことの重要性を説き、タテに速い攻めを実現しようとしました。

監督の采配に注目すると観戦の楽しみも広がる

チーム戦術の立案・実行や情報収集・分析など、サッカー日本代表監督の役割は重要です。監督の戦術スタイルはチームの特色に反映され、勝敗を左右します。

サッカー日本代表の歴代監督には、それぞれポリシーや得意とした戦術がありました。監督の戦術スタイルに注目すれば、日本代表戦がより楽しく観戦できるはずです。