5人制サッカーは、パラリンピックで注目度が上がったスポーツのひとつ。ブラインドサッカーとも呼ばれています。

フットサルや11人制サッカーと違うのは、プレー人数やフィールドの大きさだけではありません。戦術やテクニックも違うので、サッカーに詳しい人も今までとまったく異なる観戦体験が楽しめるでしょう。

今回は、5人制サッカーの魅力とフットサルや11人制サッカーとの違いをご紹介します。

5人制サッカーは、感覚を研ぎ澄まして戦うスポーツ

5人制サッカーは、一般的に「ブラインドサッカー」と呼ばれているパラスポーツ。各チームが4人のフィールドプレーヤーと1人のゴールキーパーで構成され、その名のとおりコート内では1チーム5人で競技を行います。

同じく1チーム5人で競技をおこなう「フットサル」が5人制サッカーと呼ばれることもありますが、実は別の競技。ブラインドサッカーと呼ばれる競技の正式名称が、5人制サッカーといいます。

この記事ではこちらの5人制サッカーについて紹介していきます。

5人制サッカーの魅力と注目ポイント

5人制サッカーと観戦の際の注目ポイントをご紹介します。

これらの点に注目すると、もっと5人制サッカーが楽しめるはずですよ。

選手の鋭い感覚から生まれる連携

5人制サッカーでは、選手はアイマスクを着用し、視覚に頼らずにプレーするスポーツです。このため、音や声、触覚を駆使してゲームを進める必要があります。

ガイドがゴールの後ろにいてボールの位置を声で知らせたり、ボールを持った相手に向かう時は「ボイ!」と声を出すなど、選手や音でフィールドの状況を把握するのです。

このように、視覚以外の感覚を最大限に活用することで、仲間との連携を図ります。

ダイナミックなプレー

視覚障がい者スポーツの中でも、5人制サッカーは選手が自分の判断で自由に動くことができる種目です。

選手は全力で走り、接触プレーも多く、視覚からの情報が得られないなかでのダイナミックなプレーが展開されます。

選手たちにとって5人制サッカーのコートは、日常生活では味わえない感覚を味わえる場所でもあるのです。

チームワークとコミュニケーション 

5人制サッカーでは、選手同士のコミュニケーションが非常に重要です。

フィールドプレーヤーは「ボイ!」と声を出して相手に自分の位置を知らせる必要があり、これにより衝突を避けることができます。

このような声を使ったコミュニケーションは、チームワークを強化し、選手同士の絆を深める要素となります。

5人制サッカーのルール

アイマスクを着用する

ブラインドサッカーならではのルールとして、フィールドプレーヤーによるアイマスクの着用が挙げられます。

アイマスクおよび視力に関する規定は国際大会と国内大会でルールが異なり、国際大会では、医師の検査・判断を受けたうえで、基本的な用具に加えてアイパッチとアイマスクの着用が必要です。

日本国内の大会では、晴眼者も弱視者も平等に楽しめるように視力検査による判定はありません。出場者全員のアイパッチとアイマスクの着用が必要となります。

ブラインドサッカーは、晴眼者も弱視者も一緒に楽しめるスポーツなのです。

音の出るボールを使う

ブラインドサッカーでは、転がすと音の出るボールを使用するのがルール。

ボールサイズはフットサルボールと同じですが、ボール内部に金属のプレートが取り付けられており、転がったときに「シャカシャカ」と音が鳴る仕組みになっています。

選手たちは、この音を頼りにボールの場所を把握しコントロールするのです。

ポジションと役割

4人のフィールドプレーヤーは、先述のとおりアイマスクを装着するのがルール。敵陣ゴールの裏にガイド(コーラー)が立ち、ゴールの位置と距離、角度などをフィールドプレーヤーに声で伝えます。また、ゴールキーパーは晴眼者または弱視者が務めるルールです。

フィールドプレーヤーは、ボールを持った相手に向かっていくときに「ボイ!」という声を出さなければいけません。この声掛けには、選手の存在を知らせることで衝突を避ける目的があります。

「ボイ」とはスペイン語で「行く」という意味。もし声を出さなかった場合、ファウルとなります。

試合時間とピッチのサイズ

5人制サッカーの試合は前半後半各20分、その間に10分間のハーフタイムがあります。

フィールドのサイズは長さ30〜35メートル、幅18〜20メートル。バスケットコートとほぼ同じサイズです。ピッチのサイドラインには高さ1メートルほどの壁が設置されています。

5人制サッカーとフットサル、11人制サッカーの違い

5人制サッカーフットサル11人制サッカー
プレー人数とポジション・5人(FP4人、GK1人)
・スタッフ2人(監督1人、ガイド1人)
5人(FP4人、GK1人)11人(FP10人、GK1人)
試合時間とルール・20分ハーフ
・プレイングタイム
・オフサイドなし
・FPはアイマスク着用
・選手交代は自由
・20分ハーフ
・プレイングタイム
・オフサイドなし
・選手交代は自由
・45分ハーフ
・アディショナルタイム
・オフサイドあり
・選手交代の人数とタイミングに制限あり(審判の許可も必要)
フィールドサイズとボール・バスケットコートとほぼ同じ
・転がると音の出るボール
・バスケットコートとほぼ同じ
・弾みの少ないボール
・縦105m×横68m
・弾力性と飛行特性のあるボール
プレースタイルと戦術・選手同士のコミュニケーションが重要
・視覚に頼らない判断が必要
・テクニカルかつ戦術的
・瞬時の判断や素早いパスが必要
・複雑な戦術とポジショニングが多様
・攻撃や守備の戦術が多岐

5人制サッカーというと、フットサルを思い浮かべる人も多いでしょう。また、11人制サッカーとの違いは人数以外にどういった点があるのか気になる方もいらっしゃるはず。

この章では5人制サッカーをフットサル、11人制サッカーと比較してみました。

プレー人数とボジション

5人制サッカーとフットサルのプレー人数は5人。11人制サッカーの半数以下というのは共通です。

しかし、5人制サッカーの試合には、監督とコーラーと呼ばれるガイドの2人のスタッフも必要ですので、計7人で戦うことになります。

コーラーは、フィールドプレーヤーの目の代わりの存在。相手ゴール裏に立ち、ゴールまでの距離や角度などの情報を伝えて選手をサポートする役割です。

試合時間とルール

5人制サッカーとフットサルの試合時間は、20分ハーフ。その間のハーフタイムが10分で、時計はプレーが止まったときに停止する「プレイングタイム」なのも共通しています。

ルールの共通点としては、5人制サッカーとフットサルには、11人制サッカーのようにオフサイドルールがありません。そして11人制サッカーには選手交代の人数やタイミングに制限がありますが、5人制サッカーとフットサルには制限がなく、自由です。

5人制サッカーがフットサルと11人制サッカーのルールと大きく違う点は、フィールドプレーヤーにアイマスクの着用を義務付けていることが挙げられます。これは公平性を保つ目的で設定されているルールです。

フィールドサイズとボール

5人制サッカーとフットサルは、コートサイズもほぼ同じ。11人制サッカーよりもかなり小さめの設定です。5人制サッカーのフィールドはフットサルコートより小さく設定されることもあります。

ボールもフィールドサイズに合わせた特徴があり、5人制サッカーとフットサルのボールは、11人制サッカーのボールよりも弾力性が低く小さめです。

5人制サッカーのボールがフットサルと11人制サッカーと異なる点は、転がすと音がなるということ。この音によって選手たちはボールの位置を知ることができるのです。

プレースタイルと戦術

フットサルは、よりテクニカルで戦術的なプレーが求められます。選手は、瞬時の判断や素早いパス回しが必要で、攻撃と守備の両方において全員が関与することが求められます。

一方5人制サッカーのプレースタイルは、選手がボールの音やコーラーの指示をたよりに動くため、選手同士のコミュニケーションが重要です。わざとボールを浮かせて回転させないことで、相手がボールの位置を知らせないというテクニックなど、5人制サッカーならではの戦術も繰り出されます。

オフサイドの有無

 11人制サッカーにはオフサイドルールが存在し、これがプレースタイルに大きな影響を与えます。選手はオフサイドを避けるために、ポジショニングやタイミングを考慮する必要があります。

一方で5人制サッカーとフットサルには、オフサイドの概念がありません。そのため選手たちは制限なく柔軟にゴールを攻めることができます。

5人制サッカー観戦を楽しもう!

5人制サッカーは、ブラインドサッカーの正式名称。フットサルとは違う競技です。パラリンピック東京2020大会で5位の成績をおさめたことで注目を集めました。

また、2022年にはブラインドサッカー初となるトップリーグ「LIGA.i ブラインドサッカートップリーグ」が始まっています。

5人制サッカーの選手たちのプレーをみることで、きっとあなたが無意識に設定している固定概念や価値観がひっくり返されるはず。ぜひ一度観戦してみてくださいね!