野球におけるショートの基礎知識

野球におけるショートの基礎知識をまとめました。なぜ野手の中でもとくに注目されるのか、チェックしていきましょう。
セカンドとサードの間を守る選手
内野手(本塁・一塁・二塁・三塁を結んだエリアを守る選手)の一人で、守備位置はセカンドとサードの中間です。三遊間(サードとショートの間)から二遊間(セカンドとショートの間)はもちろん、センター前からレフトまで守ります。
遊撃手やshortstop(ショートストップ)と呼ばれており、割り振られた守備番号は6番。
遊撃手という言葉は、明治時代の教育者である中馬庚が命名したのが由来です。もともと野球選手だった中馬庚は、「ベースボール」を「野球」と訳したほか、「ショート」を戦況に応じて行動する遊撃隊に例えて「遊撃手」と訳しました。これらの言葉は定着し、現在まで使われています。
キャッチャー・セカンド・センター・ショートはセンターラインといい、守備力がとくに重視されるポジションとされています。ちなみにファーストとセカンドの間に同様の野手がいないのは、野球では右方向より左方向に打球が飛ぶことが多く、ファーストとセカンドで十分カバーが可能だからです。
守備の花形と呼ばれている
ショートは守備の花形と呼ばれるポジションです。内野手の中でとくに守備範囲が広く、高い身体能力と技術力が求められることから、守備の上手い選手が任されるポジションとされます。
プロ野球では、俊足・強肩・堅守を兼ね備えた選手しかショートにはなれません。さらに打撃能力や体格を備えたショートは、大型遊撃手と呼ばれることも。キャプテン的な存在やフィールド上のムードメーカーとして、チームの士気を高める役割もあります。
昔は守備位置や人数が違っていた
ショートはもともと2人いて、当時はピッチャーの両隣が守備位置でした。その後1人になり、二塁の上辺りを守っていたセカンドと投手の間に守備位置が移動しています。
なお、shortstop(ショートストップ)という名称は、当時バッター(打者)のすぐ近くで守る役割を担っていたことから、ショート(短く)ストップ(止まる)と名付けられた説が一般的です。
野球におけるショートの役割

守備の花形と呼ばれる野球のショートは、役割が非常に多いポジションです。どのような役割があるのか、具体的に解説します。
打球の処理
ショートは、他の野手と比較して打球を処理する機会が多い傾向があります。二塁や三塁の周辺の打球から、レフトやセンターの間に落ちそうな打球まで、広範囲にわたる打球の処理が必要です。
内野手の中でもっとも広いエリアを、セカンドと連携しながら守ります。ダブルプレー(1回のプレーで2つのアウトをとること)に参加することも多いため、正確に捕球して送球する技術が必要です。
ベースカバー
ランナー(走者)をアウトにするため、他の野手からの送球に備えてベース近くに位置取りするのもショートの役割。二塁と三塁のベースカバーのために、主に二塁に入ります。セカンドと接触しないように連携をとり、盗塁や牽制、ダブルプレーに備えなければいけません。
ランナー二塁もしくは一塁二塁のときは、セカンドと交互に二塁ベースに入って二塁ランナーを牽制します。サードが打球をとるために飛び出している場合は、三塁ベースカバーに入るのがセオリーです。
カットプレー(中継プレー)
カットプレーとは、外野からの返球を内野手が中継ぎして目的地までつなぐことです。センターからレフト方向に打球が飛んだとき、各送球塁に適した位置に入って中継ぎをします。
ショートは、セカンドやサードと連携したダブルプレーが多い傾向があるのが特徴。セカンドが中継ぎをするとき、ショートは位置やカット・ノーカットの指示を出すこともあります。外野からの送球がよい場合は、ノーカットにする判断も必要です。
牽制や守備のサインを出す
ランナーが二塁にいるときは、状況を伺いながら右投げのピッチャーに二塁牽制のサインを出します。左投げピッチャーにサインを出すのはセカンドの役割です。
キャッチャー(捕手)がピッチャーに出すサインを、内野手を通じて外野に共有しますが、その際、ショートも外野へ伝える重要な役割を担っています。
情報を共有し、打球が飛んできそうなコースを予想して動くことで、守備の成功率を高めるのもショートの役割の一つです。
野球のショートに求められる能力

ではどのような選手が、野球のショートに向いているのでしょうか。ショートに求められる能力を紹介します。
俊敏性・足の速さ
広範囲の守備に対応するためには、すぐに行動にうつる俊敏性と打球に追いつく足の速さが必要です。さまざまな場所に飛んでくる打球を確実に捕球して、ランナーをアウトにします。自然と運動量が多くなるため、守り切るための体力も必要です。
フィールディング
フィールディングとは、捕球や送球など一連の守備動作のことを指します。ショートは短時間でボールの処理が必要な場面が多く、瞬時に判断して最適な動作で守らなければいけません。
ボールを打った瞬間、ボールのコースを予測してポジションにつきます。ベースカバーやカットプレーの位置取りも重要です。シーンにあわせた適切な送球や、難しい体勢からの送球が求められるので、ショートには高いフィールディング技術が必要とされます。
強い肩
ショートは、遠い距離でも素早く送球できる強い肩が必要なポジションです。バッターや一塁ベースから離れているので、強い肩と素早い投球動作でランナーをアウトにしなければいけません。正確かつ確実な送球のためには、肩の柔軟性と強靭さが求められます。
状況判断能力
位置取りやサイン、他野手との連携など、判断が求められるシーンはたくさんあります。そのためショートには、判断能力と高い野球IQが必要です。
また、守備の要として、チーム全体の戦術理解や指揮力も求められます。内野手や外野手の守備位置を調整する役割を担うため、コミュニケーションやリーダーシップなどの能力はかかせません。
野球におけるショートの有名選手

野球におけるショートの有名選手について、情報をまとめました。基本情報や特徴について、くわしく紹介します。
坂本勇人
所属チーム | 読売ジャイアンツ |
ポジション | ショート・サード |
広い守備範囲と、ファーストへの送球が評価されているプロ野球選手です。特に三遊間の打球に強いのが特徴。2009年にはショートの守備率でリーグ1位を記録し、さらにバッターとしては2016年にセ・リーグでショート初の首位打者を獲得しました。
松井稼頭央
所属チーム | 西武ライオンズ(2度在籍)、ニューヨーク・メッツ、コロラド・ロッキーズ、ヒューストン・アストロズ、東北楽天ゴールデンイーグルス |
ポジション | ショート・セカンド・サード・外野手 |
前進バネと呼ばれる高い身体能力が特徴の、日本人初の内野手メジャーリーガーです。肩の強さや動きの良さなど、ショートに必要な能力をすべて備えていると評価されています。打力にも優れていて、現役時代は日本球界最強のオールラウンド選手と呼ばれていました。
源田壮亮
所属チーム | 埼玉西武ライオンズ |
ポジション | ショート |
守備範囲の広さと、投げるまでの速さに定評があるプロ野球選手です。好守備を見せたとき、「源田たまらん」のワードがファンの中ではお約束に。2023年のWBC準決勝メキシコ戦では一度はセーフとされた判定が覆り、「源田の1ミリ」と称賛されました。
今宮健太
所属チーム | 福岡ソフトバンクホークス |
ポジション | ショート |
ベストナインを4回、ゴールデングラブ賞を5回受賞。優れた身体能力を活かしたプレーが特徴で、広い守備範囲が高く評価されています。球界屈指の強肩であり、三遊間の深い位置からでもファーストでアウトにできるスローイングが魅力です。
ショートの守備に注目して観戦しよう
野球におけるショートは、高い守備能力が求められるポジションです。守備の花形と呼ばれていて、さまざまな役割があり、プレーにも見応えがあります。ショートの守備に注目すれば、より野球観戦が面白いものになるでしょう。
ENSPORTS fanでは、野球観戦をたくさんの方々に楽しんでいただくために、観戦マナーや観戦初心者のためのルール解説記事なども公開中。そちらぜひチェックしてみてください。