日本プロ野球のトライアウトは、戦力外通知を受けた選手が再チャレンジの機会を得られる重要な場です。生まれる数々のドラマに注目が集まっており、野球場での観戦や動画配信サービスでの配信も行われています。 本記事では、野球におけるトライアウトの概要や内容をまとめました。参加する選手や合格者数、よくある疑問も紹介するので、ぜひチェックしてください。

野球におけるトライアウトの概要

野球におけるトライアウトについて、基礎知識を解説します。日本プロ野球(NPB)とメジャーリーグ(MLB)では意味や内容が異なるので、違いを確認しておきましょう。

戦力外となった選手が所属先を求めてアピールする場

日本プロ野球におけるトライアウト(12球団合同トライアウト)とは、戦力外通知を受けた選手を対象とした適正テストのことです。全12球団合同で実施されるもので、球団との再契約を目指して、選手は自らの能力をアピールします。

トライアウトの実施日は毎年異なりますが、だいたい11月中旬や12月上旬ごろ。関係者の目に留まることで、翌年の契約や入団テストへの招致につながります。

ただし、各球団による選手獲得が減少したことから、NPB(日本野球機構)は2024年の合同トライアウト開催を見送る方針を通達しています。その結果、2025年は日本プロ野球選手会が独自に「エイブルトライアウト20xx~挑め、その先へ~」を開催することになりました。

メジャーリーグにおけるトライアウトとは

メジャーリーグにおけるトライアウトとは、入団テストのことです。チームに加入を希望する選手が、自分の能力をアピールして契約を目指します。

メジャーリーグでは、オフシーズンのスプリングキャンプとトライアウトを兼ねるのが一般的。中には、マイナー契約を結んで参加する招待選手もいます。トライアウト期間中は選手のふるい分けが行われますが、関係者の目に留まれば、メジャーリーグ昇格のチャンスを掴むのも夢ではありません。

トライアウトに参加する選手

トライアウトは、球団から選手契約を解除された選手を対象に行われます。具体的な参加資格は以下の通りです。

  • 特定のチームに所属していない、自由契約選手
  • 日本プロ野球に所属経験がある選手

参加資格をクリアしていれば年齢に制限はありません。

加齢だったり結果を残せなかったりといった理由で戦力外通知を受けながら、現役続行を希望している選手が参加できるのがトライアウトです。中には心の整理のためや、引退試合に出ることを目的として、トライアウトにチャレンジする選手もいます。

野球におけるトライアウトの内容

日本プロ野球におけるトライアウトの内容をまとめました。方式とルール、流れについて、くわしく紹介します。

シート打撃方式で行われる

トライアウトは、シート打撃形式(実戦形式で行う打撃)で行います。実際の試合と同じように選手が守備につき、バッター(打者)とピッチャー(投手)が対戦する方法です。

ピッチャー1人につきバッター3人と対戦
バッター1人につきピッチャー7人と対戦

カウントは0-0からスタートします。得点や勝敗はあまり関係なく、あくまで選手のプレーをテストするものです。ピッチングやバッティングはもちろん、守備や走塁などの能力もチェックされます。

厳密なルールは定められていない

日本プロ野球におけるトライアウトでは、厳密なルールは定められていません。時間の都合でカウント1-1からスタートしたり、3アウト制ではなかったりなど、そのときの状況によって内容が変化するケースがあります。

1人のピッチャーがバッターとピッチャー両方のテストを受けたり、野手登録の選手がピッチャーとして参加したりしてもOKです。関係者の要望が反映されることもあります。

また、テスト時の守備についても柔軟な運用がされています。基本的にはトライアウト受験者が守備につきますが、人数が足りない場合にはスタッフが補助に入ることも少なくありません。

トライアウト後の流れ

トライアウト参加選手に興味を示した球団は、トライアウト後5日以内に電話で通知します。そこで翌年の契約や入団テストの招致を選手に伝えるのが、基本的な流れです。

年末に所属球団と再契約に至るケースや、翌年初頭や春季キャンプの入団テストを経て獲得にいたるケースもあります。なお、トライアウト前に獲得希望球団が現れた選手は、トライアウトには参加しません。

野球におけるトライアウトの合格者数

野球におけるトライアウトの合格者を年度ごとにまとめました。

合格人数
2015年4名
2016年3名
2017年2名
2018年3名
2019年3名
2020年6名
2021年1名
2022年4名
2023年2名
2024年3名

上記を見ると、数名ほどしか合格できない狭き門であることがわかります。

例えば2024年は45名がトライアウトに参加しましたが、NPB12球団への移籍が決まったのは3名のみ。合格率は6.7%になる計算です。

実際にトライアウトから日本プロ野球に復帰できる選手は、ごく一部と言えます。

野球のトライアウトのよくある疑問

日本プロ野球におけるトライアウトのよくある疑問に答えます。トライアウトについて疑問点を解消するために、ぜひ参考にしてください。

Q1. トライアウトは観戦できる?

トライアウトは野球場で観戦できます。日本プロ野球選手会の公式サイトから、チケットを購入しましょう。ただし、雨天の場合は屋内で開催されるため、非公開になることもあります。一部動画配信サービスでも配信をしているので、ぜひチェックしてください。

Q2. 球団からオファーされなかった場合は?

球団からオファーがない場合でも、他のセカンドキャリアにつながる可能性があります。日本プロ野球以外にも、以下に挙げるような関係者が視察に訪れるためです。

  • 社会人野球
  • 海外の球団
  • 格闘技
  • 日本競輪学校
  • 一般企業

関係者の目に留まり、これまでの経験や身体能力が活かせる新たな道が開かれることもあります。野球選手として区切りをつけ、新しい人生を歩むキッカケとする選手は少なくありません。

Q3. トライアウトの参加上限は?

2019年の規定により、同一人物による参加回数は最大2回までになりました。参加する各選手は、制限のあるなか挑むことになります。

Q4. トライアウトの開催地は?

トライアウトの開催地は毎年異なり、その年の運営を担当する球団の本拠地で行われます。2025年の開催地は「MAZDAZoom-Zoomスタジアム広島」です。11月12日(予備日11月13日)に開催が予定されています。

Q5. トライアウトとスカウトとの違いは?

野球におけるスカウトとは、各球団が選手に対してオファーすることです。スカウトマンが優秀な選手を発見して監督に推薦します。

一方のトライアウトとは、選手側が球団に対して自らの能力をアピールすることです。球団と選手のどちらがアプローチするかが、主な違いといえます。

Q6. トライアウトと入団テストの違いは?

入団テストとは、一部の球団が入団希望者を集めてテストを実施することです。日本プロ野球に所属経験がある選手を対象としたトライアウトと違い、主に新人を対象としています。

日本プロ野球ではドラフト制度による入団が原則であり、テストの結果だけで直接契約することはできません。球団はテスト結果を参考にしつつ、ドラフトで指名するかどうかを検討します。

トライアウトの結果に注目しよう

日本プロ野球におけるトライアウトとは、戦力外通知を受けた選手が再契約を目指して参加する場です。野球人生をかけたチャレンジからは、数々の人間ドラマが生まれます。

トライアウトは開催地での観戦に加え、動画配信サービスでも視聴が可能です。選手それぞれの結果やその後のセカンドキャリアに、ぜひ注目してみてください。

ENSPORTS fanでは、野球観戦をたくさんの方々に楽しんでいただくために、観戦マナーや観戦初心者のためのルール解説記事なども公開中。そちらぜひチェックしてみてください。