今回は、サッカーのウイングについて解説します。
サッカーの得点シーンは、多くのファンを釘付けにする、サッカー観戦の醍醐味の一つ。サイドから得点シーンを作り出してくれるのが、ウイングです。
この記事では、そんなウイングについて深堀りしていきます。求められる能力、有名な選手についてわかりやすく解説しましたので、ぜひサッカー観戦に活かしてみてください。
サッカーのウイングの役割
ウイングは、左右のエリアから攻撃をしかけてゴールを決めたり、ゴールにつながるラストパスを出したりして得点を狙うポジションです。
ディフェンス時は、サイドから相手にプレッシャーをかけていきます。
オフェンス時の役割と動き
ゴールに近い左右のエリアから、攻撃を活性化させるのが主な役割です。
具体的にはサイドからドリブル突破で切れ込み相手ディフェンスを混乱させたり、中央にセンタリングを供給して味方のシュートチャンスを演出したりします。
攻撃に人数をかけられないサイドエリアでは、単独で攻撃をしかけられる個の力も重要です。相手ディフェンダーとの1対1の対決(デュエル)を制すれば、数的優位を作り出せるため、積極的に攻める動きが求められます。
ディフェンス時の役割と動き
ディフェンス時には、フィールドのサイドラインに沿ってポジションをとり、サイドにいる相手選手にアタックしてボールを奪う役割を求められます。
味方ディフェンスから逃げてきた相手のボールを奪うほかに、サイドから中央に向かって相手を追い込む動きも特徴的。
相手がサイド攻撃が少ないチームの場合は、中央寄りにポジションを変更し、味方と連動してボールを奪います。
サッカーのウイングに求められる能力
サイドの広いエリアで攻守に活躍するウイングには、足の速さはもちろん、試合を通して走り続けるスタミナが欠かせません。
さらにディフェンスを一人でかわせる突破能力と正確なパスが出せるクロス精度があれば、どんなチームでもウイングとして活躍できる選手に近づけます。
突破能力
相手ディフェンダーとの1対1の対決を制して、決定的なシーンを作る能力が突破能力です。
サイドエリアは相手の守備も薄くなりがちなので、他のポジションに比べて1対1の状況になりやすいエリア。ディフェンダーを抜き去り、サイドから相手守備陣を崩せれば、中央の守りも崩れて攻撃の幅も広がるでしょう。
オフザボールの際にも足の速さがあれば、敵を置き去りにして味方のロングパスを受け取り、そのまま相手ゴールへ襲いかかれます。抜かれるのを防ぐために、ディフェンスが激しくチャージングしてくればファウルをもらえます。
フリーキックやペナルティキックを獲得して得点チャンスを生み出せるのも、突破能力に優れたウイングの特徴です。
クロス精度
ゴールエリアのサイドから、中央にボールを供給する能力がクロス精度です。
クロスからのヘディングシュートは、ボールの角度やスピードが急に変化するため、ゴールキーパーが最も防ぎにくいシュートの一つ。足元を狙うグラウンダーの高さのあるクロスと使い分ければ、相手はダイレクトシュートとヘディングシュートの両方を警戒しなくてはいけません。
相手守備陣の判断を惑わす攻撃ができれば、チームの得点率も上昇するでしょう。
ゴール正面はディフェンスが厚いため簡単に得点はできませんが、空いているサイドから正確なクロスを供給できれば、得点チャンスは大幅に向上します。反対にクロス精度がなければ、パスカットされてカウンター攻撃の餌食になってしまうため、クロス精度の重要性がわかります。
スタミナ
サイドラインを何度も全速力で駆け上がるウイングには、スタミナが必要です。
ウイングは広いスペースを利用して、味方のパスを引き出す動きを試合中に何度も行い、チームの攻撃に変化を加えます。相手ディフェンスにサイド攻撃を警戒させることで、守備を乱して得点チャンスを広げるのです。
その一方でリスクもあります。味方のパスに合わせて飛び出すタイミングや、味方のパスが少しでもずれるとボールに届かず、相手ボールになるばかりかスタミナも消費してしまいます。
攻撃と守備に走り回るために、ウイングにはトライアンドエラーを繰り返せるだけのスタミナが欠かせません。
ウイングの有名サッカー選手を紹介
スピードやテクニックを活かせるウイングでは、体の強さはそれほど重要視されません。
そのためさまざまな個性ある選手が活躍しています。ここでは日本選手、海外選手、漫画の選手から、5選手紹介していきます。
- 三浦知良
- 乾貴士
- リオネル・メッシ
- ギャレス・ベイル
- 平松和広
三浦知良
三浦知良は、「キングカズ」の愛称で親しまれている、日本のレジェンドプレイヤーです。
54歳でJリーグの1部リーグでプレイした経歴を持ち、2018年には、国内リーグでゴールを決めた最年長プロ選手としてギネス世界記録に認定されています。
1986年に、日本人として初めてブラジルの名門クラブであるサントスFCとプロ契約を結んだ選手で、その後クラブを渡り歩きながらも、サッカー大国ブラジルで活躍。1988年のブラジルサッカー専門誌「プラカー」では、年間ポジションランキングで左ウイングの第3位に選ばれています。
1990年にJリーグが発足すると、日本の読売サッカークラブ(現東京ヴェルディ)に移籍し、日本にサッカーブームをもたらしました。世界で活躍する日本人サッカープレイヤーとして、パイオニア的な存在が三浦知良なのです。
シザーズをはじめとするフェイントを駆使したドリブル突破を武器に、一瞬で相手ディフェンダーを抜き去る1対1の強さが持ち味。
ワールドカップ最終予選でゴールを決めるなど、強いメンタリティーの持ち主でもあり、サッカー選手はもちろんプロ野球のイチロー選手からも精神力を称賛する声が集まっています。
乾貴士
乾貴士はドイツのブンデスリーガやスペインのラ・リーガで活躍した日本のウイング選手。
ラ・リーガは日本人が目立った活躍を残せていないリーグとして知られていましたが、SDエイバルで日本人最多出場記録を更新するなど実力を認められ出場機会も増加。2017年のバルセロナ戦では2得点の活躍をみせ、日本のテレビを賑わせました。
相手ゴールの斜め前から、ドリブルやトラップで切り返して相手ゴールの隅を狙うカットインシュートを得意としており、ミドルレンジからでも強力なシュートで得点を重ねています。2018年のワールドカップでは日本代表のウイングとして活躍し、決勝トーナメントのベルギー戦では鮮烈なミドルシュートを決めたことは、記憶に新しいところでしょう。
2021年には古巣のセレッソ大阪へ復帰した乾貴士。これからの日本での活躍にも注目です。
リオネル・メッシ
リオネル・メッシは、最高のサッカー選手の証といわれるバロンドールを7回受賞した、伝説的なサッカープレイヤーです。他にもUEFA年間最優秀選手に輝くなど、数々の賞を総なめにしてきました。
その知名度の高さから、アディダスなどの有名企業が広告に起用しており、抜群の人気を誇っています。2019年に世界のアスリート年収ランキングでは、堂々第1位に選出されました。
身長169cmと小柄な体格ながら、相手ディフェンダーがボールを奪えないほどの卓越したボールコントロール能力と、一瞬で相手を置き去りにする瞬発力も兼ね備えています。最も優れているのは得点能力で、利き足の左足から放たれるシュートは、一流のゴールキーパーでも防ぐことは困難です。
2012年には公式戦69試合に出場し、91得点を記録。2011-2012年シーズンには、37試合に出場し50得点をマークするなど、1試合平均1得点以上の驚異のペースでゴールを重ねました。2011-2012年の記録は、ギネス世界記録に認定され「メッシ本人にしか破れない記録」ともいわれています。
2021年には、長年所属したFCバルセロナからフランスのパリ・サンジェルマンFCに移籍。30代半ばに差し掛かった今でも、まだまだ活躍が期待される選手です。
ギャレス・ベイル
ギャレス・ベイルは、圧倒的なスピードと強力なミドルシュートを持つウェールズの名ウイングです。
ドリブル中のスピードを測定すると、なんと時速36.9kmを記録したといわれており、一度トップスピードに乗せてしまうとディフェンダーが追い付くのは至難の業。
ラ・リーガの名門クラブであるレアル・マドリードで長年プレイし、2017年のチャンピオンズリーグ決勝では、バイシクルシュートと無回転ミドルシュートを決め、マンオブザマッチに選出されました。
止まったボールを蹴る能力も優れ、フリーキックの名手としても知られています。ボールにトップスピンを加えるシュートは、壁を越えてから急激な変化を起こすため、ロングレンジからでも相手ゴールネットを揺らせる決定力も併せ持ちます。
長髪を後ろで束ねたヘアスタイルなど、見た目の凛々しさからも、世界中にファンの集める名プレイヤーです。
シュート!|平松和広
平松和広は、週刊少年マガジンで連載された人気サッカー漫画「シュート!」に登場する名ウイングです。主人公の田仲俊彦と同じ掛川高校のサッカー部で、100メートルを10秒8で走る抜群の走力を活かし、右のサイドエリアからゴールを量産しました。
ヒールリフトを改良した「ダブルヒール」と「トリプルヒール」は、対決した相手ディフェンダーが「ボールが消えた」と錯覚してしまうほどの必殺技。1対1の場面で絶大な威力を発揮し、単独でゴールに迫るドリブル突破力が大きな武器です。
類まれなるサッカーセンスを活かし、その後イングランドの名門クラブであるアーセナルへ移籍しました。
サッカーのウイングはファンを魅了する存在である
ウイングは、選手の個性が表れるポジションです。
ドリブルのテクニックを武器に守備陣を切り裂くプレイや、圧倒的なスピードでボールを前に進めるプレイは、ファンの目を釘づけにします。ドリブル突破だけではなく、味方の頭にピンポイントで合わせるクロスなど、ファンを魅了するプレイがウイングの真骨頂。
観客席から近いサイドラインでディフェンダーと繰り広げられるデュエルも、観戦するファンを大いに盛り上げてくれます。
サッカーのウイングは、ファンはもちろん味方のチームメイトですら魅了してしまう花形的ポジションです。