サッカーにおけるカードの歴史

サッカーにおけるカード制度の歴史は、試合の公正性を確保するために重要な役割を果たしてきました。以下にその進化の過程を詳しく説明します。
カード制度の導入前は口頭での注意だった
サッカーが始まった1863年から約100年間、選手に対する警告や退場は口頭で行われていました。
このため、言語の違いやコミュニケーションの問題から、選手や監督に正確に伝わらないことが多く、混乱が生じることがありました
イエローカードとレッドカードの誕生
イエローカードとレッドカードのアイデアは、1966年のワールドカップで試合中に選手に警告を出した際、言葉が通じずに問題が発生したことがきっかけで生まれました。
そして、初めて導入されたのは、1970年のメキシコワールドカップ。この大会で、イエローカード(警告)とレッドカード(退場)が正式に導入され、カラーテレビの普及とともに全世界で一気に普及しました。
イエローカードとレッドカードを導入することで、選手の行動が視覚的に明確に示され、試合の進行がスムーズになりました。
サッカーの審判がカードを使う理由

なぜサッカーの試合ではカードによる警告が行われているのでしょうか?その理由を解説します。
競技の公平性を確保する
サッカーでは、選手の行動に対する警告や退場を示すためにカードが使用されます。
カードを提示することで選手がルールを守ることを促し、試合の公正性を維持する役割を果たしているのです。
イエローカードは選手に対する初回の警告として機能し、再度の違反があった場合にはレッドカードが提示され、退場となります。
ルールを明確化させる
先述のとおり、選手や主審の言葉が理解できないとしても、カードを提示することで言語の壁を越えて選手に意図を伝えられる。それがサッカーでカードが誕生し、現在も用いられている理由です。
サッカーのカード制度は、選手や観客に対して審判の判断を明確に示す手段でもあります。
カードを提示することで、どの行為が反則であるかを視覚的に伝えることができるため、選手や観客が試合の進行状況をすぐに把握できるのです。
選手の行動管理をする
サッカーのカード制度は、選手の行動を抑制するための重要な手段。
イエローカードは、反スポーツ的行為や審判への異議申し立てなどに対してにも提示され、選手に対して行動を改めるよう促す役目もあります。
これにより、試合中の不適切な行動を減少させる役割があるのです。
競技の流れを維持する
カード制度は、試合の流れをスムーズに保つためにも重要です。
選手が不適切な行動を取った場合に即座にカードを提示することで、試合の進行を妨げる行為を抑制し、競技のリズムを維持します。
とくにレッドカードが提示されると退場処分になるだけでなく、別の選手で穴埋めすることもできないというルールがあるため、チームやゲーム展開に大きな影響を及ぼします。
イエローカードとは

サッカーでは、言語が通じないことがあっても意味が把握できるように視覚的にわかりやすいカードを提示します。
イエローカードの具体的な意味と該当する行為について、チェックしておきましょう。
イエローカードの意味は「警告」
イエローカードは、反則の中でも悪質な行為をおこなった選手に提示される黄色いカードのこと。意味は「警告」で、同一試合で1人の選手に2枚出されると、レッドカードと同じく退場になります。退場した選手の穴埋めも認められず、人数を欠いた状態でプレーを続行することになることも同様です。
大会によっては累積システムがあるのもイエローカードの特徴。リーグ戦やカップ戦ごとに一定の枚数を超えると次の試合に出られなくなります。たとえば明治安田J1リーグでは、イエローカードが累積4回になると直近の試合には出場できません。
イエローカードに該当する行為
イエローカードに該当する行為は以下のとおりです。
- 反則を繰り返すプレー
- 無謀なプレー
- 相手のチャンスを潰すプレー
- 非紳士的行為
- プレーの再開を遅らせる遅延行為
- ゴール後の過度なパフォーマンス
反則の繰り返しによってイエローカードが提示される可能性がありますが、回数や内容にはとくに決まりはありません。審判によって判断されます。
レッドカードとは

イエローカードより重い処分が課されるのが、レッドカードです。意味や該当する行為など、基本のルールを解説します。
レッドカードの意味は「退場」
レッドカードは、イエローカードよりさらに悪質な行為に出される赤いカードです。提示されると1枚で退場処分になり、次の試合まで出場停止になります。映像を用いて判断するVARの対象です。
サッカーでは、レッドカードで退場した選手の代わりに控え選手を入れることはできません。そのため数的不利な状況で試合をすることに。退場によってチームの人数が7人未満になると試合を継続できないため、没収試合になります。
レッドカードに該当する行為
レッドカードに該当する可能性のある行為には、以下のようなものがあげられます。
- 著しく不正なプレー
- プレーと関係ない場面での暴力行為
- 決定的な場面で手を使った意図的な得点機会阻止
- 相手選手・監督・審判に対する侮辱行為
- イエローカードを1試合で2枚提示
たとえば「決定的な場面で手を使った意図的な得点機会阻止」には、ホールディングやキッキングといった反則が該当するケースもあるようです。
また、レッドカードが提示される基準として「DOGSO(ドクソ)」があります。
DOGSOとは「Denying an Obvious Goal Scoring Opportunity」の略語で「決定的な得点機会の阻止」という意味です。
- 反則を犯した場所とゴールの距離が近いか
- 攻撃側のプレーがゴール方向に進んでいるいか
- ファールした守備側の選手以外に、カバーできる守備選手はいたか
- ファールがなければ攻撃側がボールキープ、もしくはシュートできるか
上記のDOGSOになる条件を満たしたファウルで相手の決定機を逃した場合、反則をした選手に原則レッドカードが提示されます。
グリーンカードとは

グリーンカードは「フェアプレー、リスペクトのある行為」というポジティブな意味として使われます。
グリーンカードの発祥は日本。小学生(U‐12)以下のサッカー大会でフェアプレーを広めるために、2004年から日本サッカー協会が導入したのがはじまりです。
グリーンカードの意味は「称賛」
サッカーU-12の試合では、主神がフェアプレーやリスペクトのある行為をした選手に対してグリーンカードを出します。
審判はグリーンカードを提示することで、対象選手に対して「今のフェアなプレーだったよ!」「リスペクトのある行為だったよ!」という賞賛をあわらすのです。
主審がプレーが中断したタイミングで対象プレイヤーに対してグリーンカードを提示するので、グリーンカードを提示するためにプレーを中断することはありません。
また、グリーンカードは勝敗には無関係で、出された枚数によって加点されるといったルールもありません。
グリーンカードに該当する行為
グリーンカードには「フェアプレー」「リスペクトのある行為」などの意味があり、以下のような行為が該当します。
- 怪我をした選手に思いやりを示す
- スローインやコーナーキックなどの自己申告
- 意図しない反則のときの謝罪と握手
- 試合全体を通してチームが警告や退場をうけずポジティブな態度を示す
- 問題行動を起こしそうな選手への静止
グリーンカードが出されても勝敗には関係ありません。
フェアなサッカーを通して、選手の身体面や心理面での成長をサポートすることが目的です。
【番外編】ブルーカード
最近では、ブルーカードが試験的に導入される動きがあります。
ブルーカードとは、イエローカード(警告)とレッドカード(退場)の中間に位置する新たなカードとして提案されているルールです。
カウンターを阻止するファウルを犯した選手や審判に対して反抗的な態度を示した選手が対象で、主審からブルーカードを提示されると、テクニカルエリアなどピッチ外の場所で10分間過ごすことになります。ラグビーでいうところの「シンビン」です。
ブルーカードが2枚提示された場合やブルーカードとイエローカードを1枚ずつ提示された場合、イエローカード2枚と同様に退場処分となります。
イエローカードやレッドカードの意味をチェックしておこう
サッカーにおけるカードは、競技の公平性の維持や選手の行動を管理、そして試合の流れを維持に不可欠な要素です。カード制度の導入によって、選手や観客は試合の進行をより理解しやすくなりました。
サッカーにおいてイエローカードは警告、レッドカードは退場の意味があります。
カード以外の反則時の対応や反則の具体例も紹介したので、ぜひチェックしてください。基本的な知識をマスターしておけば、より新しい視点からサッカー観戦ができるはずです。
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