ジャイアント・キリングの基礎知識

ジャイアント・キリングの詳しい意味や由来について、解説します。言葉を正しく使うために、意味をチェックしておきましょう。
ジャイアント・キリングの意味は大物食いのこと
ジャイアント・キリングは、大物食いや巨人殺しを意味する言葉です。下位のものが、実力差のある上位のものに勝利することを指します。スポーツで聞くことが多く、勝つと予想されたチームが負けたときに使用されるのが一般的です。
サッカーでジャイアント・キリングという言葉がよく使われるようになったのは、漫画「GIANT KILLING」がキッカケとされています。大物食いや大番狂わせが好物であるサッカー監督の主人公が、弱小チームを勝たせていくストーリーのサッカー漫画です。
ジャイアント・キリングの由来とは
ジャイアント・キリングの由来とされる説は、2つあります。
ダビデとゴリアテ(旧約聖書) | 羊飼いの少年ダビデが大男ゴリアテを石を投げて倒す物語 |
ジャックと豆の木(童話) | 少年ジャックが巨大な豆の木を登って巨人を倒す物語 |
どちらも小さな人間が巨人を倒す物語です。大物食いや巨人殺しを意味するジャイアント・キリングの由来となり、格下が格上を倒すことを指すようになりました。
サッカーでジャイアント・キリングが発生する理由

なぜ、サッカーでジャイアント・キリングが発生するのでしょうか。考えられる理由を解説します。
サッカーには心理戦の側面があるから
サッカーは心理ゲームの側面があるため、必ずしも実力で勝敗が決まるわけではありません。選手一人ひとりのメンタルやモチベーションがチーム全体の士気に関わってくることも多く、焦りや油断がプレーに大きな影響を及ぼすこともあり得ます。
サポーターの応援・ブーイングや試合会場、相手チームとの相性など、あらゆる要素が勝敗を左右するのがサッカーというスポーツです。思ったようにプレーできずミスを連発したり、逆にいつも以上に高いパフォーマンスを発揮したりすることも珍しくありません。
格下のチームが勝つ可能性があるから
実力を万全に発揮できて、有利な形で試合が回れば、格上相手でも勝利のチャンスは巡ってきます。サッカーは試合が終わるまでは結果がわかりません。
そのためジャイアント・キリングは、どのような試合でも発生する可能性があります。格下とされたチームが圧倒的な格上のチームに勝つ事例は実際にあるため、最後まで注目してサッカー観戦を楽しみましょう。
ジャイアント・キリングと類似した言葉

ジャイアント・キリングと類似した言葉をまとめました。それぞれの意味や由来を、紹介していきます。
番狂わせ
番狂わせとは、予期せぬ出来事によって物事が順番通りに進まなくなることです。そこから転じて、スポーツの試合で実力から予想された勝敗から異なる結果を指します。より大きな表現として、「大番狂わせ」という言葉もあります。
「番」には順序や物事の順番の意味があります。これを狂わせることから、相撲で番付の下位者が上位者に勝つことを指し、その影響でスポーツのような勝負事に使用されるようになりました。
金星
金星とは、平幕の力士が横綱を倒したときの勝ち星を指します。「金星をあげる」「大金星をあげる」と使用するのが一般的。勝ち星とは、相撲などの勝敗表で勝利したほうにつける白い丸のことです。
そこからジャイアント・キリングと同じように、下位のものが上位のものを倒すことを指すようになりました。大きな手柄を立てたときに「金星をあげる」とすることもあります。
an upset
an upset(アプセット)は、英語で「動揺させる」「ひっくり返す」「転倒させる」を意味する言葉です。スポーツや選挙では、「意外な」「番狂わせ」「予想しない結果」として使用します。なお、大番狂わせはmajor upset(メジャーアップセット)です。
boilover
boilover(ボイルオーバー)は英語で「煮こぼれる」「カンカンに怒る」を意味する単語です。ただし、オーストラリアのスラングでは、スポーツにおける意外な結末を指します。一般的な英語ではないため、通常はan upsetを使用するのが基本です。
サッカーでジャイアント・キリングが発生した試合

これまでサッカーでは、数々のジャイアント・キリングが発生しました。それぞれの概要について解説します。
ベルリンの奇跡
1936年のベルリンオリンピックで、日本がスウェーデンに勝利した試合です。当時のスウェーデン代表は、イタリアやドイツと並ぶ優勝候補の一つでした。
対する日本はオリンピックのサッカー競技で初出場です。体格面でも劣ることからスウェーデン代表が勝つと予想されましたが、3対2で日本が勝利する結果に。前半0対2からの逆転劇に日本中が熱狂しました。
1950年ブラジルW杯アメリカVSイングランド
1950年のワールドカップブラジル大会の、グループ2第2戦のことです。当時は世界最強と呼び声が高いイングランドに、格下であるアメリカが1対0で勝利しました。
当時のアメリカは参加しているセミプロの選手がわずかで、残りはアマチュアの選手ばかり。世界中に衝撃を与えたジャイアント・キリングとして、「ベロオリゾンテの奇跡」と呼ばれています。
1990年イタリアW杯アルゼンチンVSカメルーン
1990年のイタリアワールドカップの開幕戦で、アルゼンチン代表にカメルーンが1対0で勝利。当時のアルゼンチンは前回王者であり、優勝候補の一つでした。
マラドーナが負傷していたこともあって、アルゼンチンは苦戦を強いられることに。不屈のライオンと呼ばれるカメルーンはその後も勝利して、アフリカ勢初のベスト8に進出しています。
マイアミの奇跡
1996年のアトランタオリンピックで、日本が優勝候補であるブラジルに勝った試合のことです。グループリーグD組第1戦において、1対0で日本が勝利しました。
日本はブラジル戦を前に徹底的な情報収集をおこない、守備的な戦術を実行。ブラジルが勝って当然と予想された中の、ジャイアント・キリングとなりました。
2002年日韓W杯フランスVSセネガル
2002年の日韓ワールドカップの開幕戦で、セネガルがフランスに1対0で勝利した試合です。前回王者だった強豪国のフランスに対して、セネガルは大会初出場でした。
当時のFIFAランキングはフランスが首位でセネガルは79位と、まさにジャイアント・キリング。セネガルの快進撃はその後も続き、ベスト8入りをはたしています。
2018年ロシアW杯ロシアVSスペイン
2018年のワールドカップロシア大会の決勝トーナメントで、主催国のロシアがスペインに勝った試合です。これによりロシアは48年ぶりのベスト8入りを果たしています。
当時のFIFAランキングはスペインが10位で、ロシアは出場国最下位の70位。1対1のまま決着がつかず、PK戦の4対3でロシアが勝利しました。
ドーハの歓喜
2022年のワールドカップカタール大会1次リーグで、日本が強豪国のドイツとスペインに歴史的勝利を収めたことを指す「ドーハの歓喜」。1993年に日本がワールドカップ本戦出場を逃した、1993年の「ドーハの悲劇」からきています。
森保一監督はドーハの悲劇の出場メンバーでもありました。死のグループと呼ばれていたE組を首位で通過した日本は、ベスト16まで駒を進めています。
ジャイアント・キリングの可能性に注目してサッカー観戦を楽しもう
ジャイアント・キリングは、サッカーにおいて下位のチームが上位のチームに勝つことを指します。サッカーは心理戦の側面もあるスポーツのため、必ずしも実力で勝敗が決まるわけではありません。
どのような組み合わせの試合でも、ジャイアント・キリングが発生する可能性はあります。圧倒的な実力差を覆すこともあるため、最後まで可能性を信じてサッカー観戦を楽しみましょう。