ボクシングの試合では、必ずボクサーにセコンドが付き添います。作戦のアドバイスをしたり、休憩中に体をケアしたりと役割はさまざま。セコンドの判断ひとつで、試合の流れが大きく変わることもあります。 本記事では、ボクシングにおけるセコンドの役割やルールを解説します。観戦時の注目ポイントやよくある質問なども紹介するので、セコンドへの理解を深めたい方はぜひ参考にしてください。

ボクシングにおけるセコンドとは?

ボクシングのセコンドは、試合中のボクサーを一番近くで支える存在です。

言葉の意味や必要な資格、指定の位置など、基本的な知識をまとめました。

セコンドは「試合を支えるスタッフ」のこと

セコンドとは、ボクサーのそばに付き添って試合中に世話をするスタッフのことです。「second(セコンド)」は英語で、2番目・補助者・介添人といった意味があります。

セコンドは、ボクサーが試合に集中し力を出し切れるように、体と心の両方を支える存在です。セコンドの役割は重大で、その技術や判断が勝敗を左右することもあります。

セコンドに必要な資格

セコンドになるためには「セコンドライセンス」もしくは「トレーナーライセンス」が必要です。日本のプロボクシングでは「日本ボクシングコミッション(JBC)」が発行します。

これらの資格は、JBCに加盟しているジムの会長から推薦してもらえないと取得できません。トレーナーとして経験を積み、セコンドライセンスやトレーナーライセンスを取得するのが一般的です。

ラウンド中は指定の位置に着席

ラウンド中、セコンドはコーナーの外側に設置された指定の椅子に着席します。リングマットやコーナーポストに触れてはいけません。

これは進行を妨げたりレフェリーの視界を遮ったりするような、試合結果に影響する不正行為を防止するためです。

ラウンド中は席に座ったまま声をかけるだけで、リングの中に入ることはできません。実際に近くでサポートできるのは、1分間のインターバルのときだけです。

試合前・試合中におけるセコンドの役割

ボクシングのセコンドは、あらゆるシーンでボクサーをサポートします。セコンドの具体的な役割を紹介しましょう。

試合前の準備

試合の前には、作戦会議やコンディションの確認を行います。さらに以下のような準備もセコンドの役割です。

  • グローブの下にテーピングを巻く
  • ファールカップ(下腹部を保護する防具)を取り付ける
  • ワセリンを塗る(切れにくくする・ダメージ軽減)
  • ガウンを脱がせる

これらの準備をすべて短時間で正確に行うことが、セコンドの経験と技術の見せどころです。

ボクサーはグローブを装着すると物が掴めなくなるので、細かな作業はセコンドが代わりに行います。試合に集中できるように準備を整えて送り出すのも、重要な役割です。

試合中の作戦指示・アドバイス

セコンドは、試合前やインターバルの最中に作戦指示やアドバイスを行います。ラウンド間のインターバルは1分間と短く、限られた時間の中で的確かつ簡潔に指示を伝えなければいけません。

次のラウンドの戦い方など各ボクサーのスタイルに沿った的確な指示が求められるので、セコンドには普段から指導しているトレーナーがつくのが一般的です。劣勢のとき励ますなど、メンタル面のケアも行います。

インターバルでのケア

インターバルになるとセコンドはリング上にあがり、以下のようなケアを行います。

  • 椅子を用意する
  • 汗を拭く
  • マウスピースを取り出す・装着する
  • 水分補給を促す
  • グローブに付着したワセリンを拭う

準備だけでなく、これらのケアもすべてインターバルの1分以内に行わなければなりません。

ケガや腫れがあれば、止血や冷却など応急処置を行います。よりよい状態で次のラウンドに挑めるように、1分間で最大限のケアを行う技術が必要です。

危険と判断したときのタオル投入

ボクサーが試合続行不可能な状態のとき、棄権を申し出るのもセコンドの役割。ボクサーの反応の鈍さやケガの具合を見極めて判断します。

「タオル投入」とはいいますが、2019年のルール改定により、JBCではタオル投げ込みを禁止になっています。これは、リング内に物が投げ込まれることによる安全面や混乱を防ぐためです。

現在はチーフセコンドがタオルをレフェリーに向けグルグル回す「ウェイビング方式」で棄権を表明します。

棄権はTKO負けになるため、それでも選手の体を守るために決断するのですから、セコンドにとって非常に重い判断です。

ボクシングにおけるセコンドのルール

ボクシングでは、ボクサーだけではなくセコンドにも厳格なルールが適用されます。公平で安全な試合を行うために定められたルールを、わかりやすくまとめました。

セコンドの人数と配置

プロボクシングのルールでは、セコンドの人数は最大3人までです。1人がチーフセコンドとして責任者を務め、棄権を表明したりリングに入ったりといった重要な役割を担います。

あとの2人はアシスタントやカットマン(応急処置専門のセコンド)としてサポート。ボクサーを支える体制を、チームワークによって整えます。

試合を妨げる行為の例

ラウンド中は、試合の妨げになる以下のような行為が認められていません。

  • リングに入る
  • ボクサーに触る
  • リングを叩く
  • 大声で叫ぶ
  • レフェリーの判断や試合運営への干渉

セコンドは、インターバル中のみボクサーとの接触が認められています。セコンドの役割はあくまで裏方なので、リング上の戦いには干渉できません。

違反した場合のペナルティ

セコンドがルールに違反すると、レフェリーの判断で退場処分になる可能性があります。ボクサーのメンタルへの影響は大きく、不利な状態に追い込まれることも。

さらに不正行為を繰り返すなど悪質なケースでは、セコンドライセンスが剥奪されることもあります。剥奪後に再取得するためには、一定期間の資格停止や再審査が必要です。

ボクシング観戦におけるセコンドの注目ポイント

より深い視点でボクシング観戦をしたいなら、セコンドの動きにぜひ注目してください。試合がさらに面白くなる注目ポイントを紹介します。

インターバル中の動作や選手との会話

1分間と短いインターバル中に、セコンドが何をするのかに注目しましょう。椅子を用意したり水を飲ませたりする一連の動きからは、臨場感が伝わってきます。

アドバイスや指示を聞けば、次のラウンドの内容が予想できるかもしれません。リングともっとも近いリングサイド席なら、セコンドの動きや言葉を間近で確認できます。

ボクサーとセコンドとの信頼関係

ボクサーとセコンドは強い信頼関係で結ばれています。セコンドはトレーナーとの兼任が多く、日々の練習や減量サポート、肉体・精神のケアまで深く関わるからです。

励ましたり落ち着かせたりとインターバル中の声かけは、ボクサーのパフォーマンスに影響します。試合後に抱き合って勝利を分かち合ったり、共に敗北を悔しがったりする姿からは、たしかな絆が感じられるはずです。

カットマンの処置

止血やケガの応急処置を行うカットマンの技術は、まさに職人技です。状態を瞬時に判断して、インターバルの1分間で適切な処置を行います。

ガーゼで強く押さえて出血を止め、止血用の薬剤を使って傷を処置します。血が止まらなければTKO負けになる可能性があるため、勝敗を左右するような大きな責任を伴います。

タオルの準備や投入のタイミング

万が一のときすぐに棄権を表明できるように、セコンドはタオルを用意しておきます。ダメージや出血、足元のふらつきなど、ボクサーの状態を冷静に判断しなければいけません。

ボクサーの体を守るために試合を諦めることは、重く難しい決断です。セコンドがいつどのタイミングでタオルを回すのか、その緊迫した一瞬がドラマを生みます。

ボクシングのセコンドに関するよくある質問

ボクシングのセコンドについて、よくある質問に回答します。試合以外での活動やプロとアマチュアの違いなど、疑問に答えていきましょう。

セコンドは試合以外では何をしているの?

ボクシングのセコンドは、トレーナーと兼任していることがほとんどです。業務は多岐にわたります。

  • 練習メニューの作成
  • 選手のトレーニングを指導
  • 対戦相手の分析や戦略の立案
  • 体重管理のサポート
  • 悩みや不安の解消などメンタル面のケア

ボクサーが万全の状態で試合に挑めるように、日頃から総合的なサポートを行っています。セコンドの支えがあるからこそ、リング上でパフォーマンスを発揮できるのです。

アマチュアとプロのセコンドは違うの?

アマチュアとプロでは、試合の目的や安全基準が異なるため、セコンドの役割やルールにも違いがあります。

アマチュアプロ
目的安全管理や公平な試合運営の補助ボクサーのサポートとマネジメント
資格JABFの公認セコンド資格
(講習が必要)
JBCのセコンドライセンス
(ジム会長などの推薦で申請)
人数最大2人最大3人
処置ケガのリスクが少ない
簡易的なケアが多い
ダメージが大きくなりやすい
応急処置に専門性が必要

安全性を重視するアマチュアとダメージを競い合うプロの差が、セコンドの役割に違いがある理由です。

アマチュアのセコンドライセンスには等級制度があり、種類によって活動できる試合が異なります。

セコンドはどのような道具を持っている?

ボクシングのセコンドは、インターバルのとき以下のような道具をリングへ持ち込みます。

基本の道具椅子/バケツ(水を吐き出す用)/飲料水/タオル
カットマン用ワセリン/冷却剤/アドレナリン液/ガーゼ/脱脂綿/綿棒

これらの道具は、インターバルが終わるときリングからすべて持ち出さなくてはいけません。道具の管理もセコンドの責任であり、忘れ物があれば厳しく指摘されます。

セコンドの動きにも注目して観戦しよう

ボクシングのセコンドは、ボクサーを支える欠かせない存在です。試合指示や棄権時の判断など役割は大きく、勝敗を左右することもあります。

試合観戦をする際には、セコンドの動きや技術にぜひ注目してください。ボクサーとの会話や信頼関係に注目すれば、次にボクシングを観るときは、ぜひセコンドの動きにも注目してみてください。
試合の見え方が、きっと変わります。

そのほか、ENSPORTS fanではボクシング観戦初心者にむけて基本ルール試合時間を解説した記事も公開中。ぜひそちらも試合観戦前にチェックしてみてください。