ボクシングの階級がある理由

ボクシングの階級制は、19世紀後半イギリスで近代ボクシングのルールを整備する流れで導入されました。当初は数階級でしたが時代が進むにつれ細分化され、現在も定期的に調整されています。
ボクサーの安全を守るため
拳を使って激しく殴り合うボクシングは、体重や体格差が大きく影響する競技です。少しの体重差であってもパンチの威力や耐久力には差があり、怪我のリスクも高くなります。
一方的な展開や深刻な怪我を防ぎ、安全に競技をするためには階級が欠かせません。階級を細かく設定して似た体格同士で試合をする、これがボクサーの安全を守るもっとも重要な仕組みです。
公平な条件で試合を行うため
体重差があると、体格の大きなボクサーのほうが有利です。体格や体重差で勝敗が決まるなら、公平とはいえません。
階級を設けることで、体格の影響を最小限に抑え、技術・戦略・スピードなどの純粋な実力勝負が可能になります。これによってボクシング本来の魅力を楽しめるのです。
興行としての魅力を高めるため
プロボクシングは興行としての要素が強いため、収益を上げることが求められます。
階級が多いほど、タイトルマッチやチャンピオン誕生の機会が増えます。これにより、ファンの注目を集めやすくなり、ボクシング全体が盛り上がるのです。
より多くのボクサーが注目を集めるようになり、スターが生まれる可能性も高くなることに。王座争いが各階級で盛り上がれば、ボクシング業界全体の活性化につながります。
ボクサーは試合前に減量して階級に合わせる
ボクサーは試合前日の計量に向けて減量を行います。
ボクシングの試合前には「公式計量」が行われ、ボクサーは自分の階級の体重上限を守らなければなりません。そのため、試合の数週間前から食事制限や水分調整を行い、一時的に体重を落とす=減量を行います。
無理な減量は体力低下や危険を伴うため、近年では安全な減量指導も重視されています。計量後は体力を回復させるため、試合当日までに再び数キロ戻す選手も少なくありません。
この「減量とリカバリー」も、ボクサーの実力を支える重要な戦略のひとつです。
ボクシングの階級一覧【プロ男子編】

男子のプロボクシングは、世界主要団体(WBA・WBC・IBF・WBO)で共通の17階級に分けられています。
団体ごとに階級名が微妙に異なる場合がありますが、体重範囲は共通です。
| 階級 | 体重(キログラム) | 体重(ポンド) |
|---|---|---|
| ヘビー級 | 90.719kg超 | 200lb超 |
| クルーザー級 | 90.719kg以下 | 200lb以下 |
| ライトヘビー級 | 79.379kg以下 | 175lb以下 |
| スーパーミドル級 | 76.204kg以下 | 168lb以下 |
| ミドル級 | 72.575kg以下 | 160lb以下 |
| スーパーウェルター級 | 69.853kg以下 | 154lb以下 |
| ウェルター級 | 66.678kg以下 | 147lb以下 |
| スーパーライト級 | 63.503kg以下 | 140lb以下 |
| ライト級 | 61.235kg以下 | 135lb以下 |
| スーパーフェザー級 | 58.967kg以下 | 130lb以下 |
| フェザー級 | 57.153kg以下 | 126lb以下 |
| スーパーバンタム級 | 55.338kg以下 | 122lb以下 |
| バンタム級 | 53.524kg以下 | 118lb以下 |
| スーパーフライ級 | 52.163kg以下 | 115lb以下 |
| フライ級 | 50.802kg以下 | 112lb以下 |
| ライトフライ級 | 48.988kg以下 | 108lb以下 |
| ミニマム級 | 47.627kg以下 | 105lb以下 |
WBC(世界ボクシング評議会)とWBA(世界ボクシング協会)に限り、ブリッジャー級(101.604kg/224lb以下)を設置しています。
日本人選手は体格的に中軽量級が中心で、スピードとテクニックを活かした試合が多いのが特徴。たとえば、井上尚弥選手が活躍するバンタム級などが代表的です。
ボクシングの階級一覧【プロ女子編】

子プロボクシングの階級も基本的には男子と同じ17階級制ですが、団体によって若干異なります。
また、一部の団体では女子独自の「アトム級(102lb以下)」を設けています。
| 階級 | 体重(キログラム) | 体重(ポンド) |
|---|---|---|
| ヘビー級 | 90.719kg超 | 200lb超 |
| ライトヘビー級 | 79.379kg以下 | 175lb以下 |
| スーパーミドル級 | 76.204kg以下 | 168lb以下 |
| ミドル級 | 72.575kg以下 | 160lb以下 |
| スーパーウェルター級 | 69.853kg以下 | 154lb以下 |
| ウェルター級 | 66.678kg以下 | 147lb以下 |
| スーパーライト級 | 63.503kg以下 | 140lb以下 |
| ライト級 | 61.235kg以下 | 135lb以下 |
| スーパーフェザー級 | 58.967kg以下 | 130lb以下 |
| フェザー級 | 57.153kg以下 | 126lb以下 |
| スーパーバンタム級 | 55.338kg以下 | 122lb以下 |
| バンタム級 | 53.524kg以下 | 118lb以下 |
| スーパーフライ級 | 52.163kg以下 | 115lb以下 |
| フライ級 | 50.802kg以下 | 112lb以下 |
| ライトフライ級 | 48.988kg以下 | 108lb以下 |
| ミニマム級 | 47.627kg以下 | 105lb以下 |
| アトム級 | 46.266kg以下 | 102lb以下 |
男子と同様に17階級が基本ですが、団体によって違いがあります。女子でクルーザー級(90.719kg/200lb以下)を設置しているのは、一部の団体だけです。
プロボクシング女子は軽量級中心で、アトム級からスーパーフライ級で多くのチャンピオンが誕生しています。また、1ラウンド2分制(男子は3分)でテンポの早い展開が魅力です。
アマチュアボクシングの階級一覧【男子・女子】

IBA(国際ボクシング協会)により、男子が13階級、女子は12階級を定めています。一方でオリンピックなどの階級数は異なるので、違いを確認しておきましょう。
オリンピックで採用されている階級数
2024年のパリオリンピックでは、男子が7階級、女子は6階級でした。2028年のロサンゼルスオリンピックは男女でそれぞれ7階級に調整され、以下のように設定される予定です。
| 階級【男子】 | 体重(キログラム) | 階級【女子】 | 体重(キログラム) |
|---|---|---|---|
| スーパーヘビー級 | 90kg超え | ミドル級 | 70~75kg |
| ヘビー級 | 90kg以下 | ライトミドル級 | 70kg以下 |
| ライトヘビー級 | 80kg以下 | ウェルター級 | 65kg以下 |
| ライトミドル級 | 70kg以下 | ライト級 | 60kg以下 |
| ウェルター級 | 65kg以下 | フェザー級 | 57kg以下 |
| ライト級 | 60kg以下 | バンタム級 | 54kg以下 |
| バンタム級 | 47~55kg以下 | フライ級 | 45~51kg |
階級を調整は、出場選手数のバランスや公平性を保つため、オリンピックや国際大会では、開催年ごとに階級数や体重範囲が見直される場合があります。
技術やパワーの拮抗を目指す階級設定によって、より白熱した試合が楽しめるのではないでしょうか。
プロとの違い
プロとアマチュアでは、階級数や体重の範囲、ルールなどが異なります。プロボクシングはポンドを基準として17階級を設定。興行としての側面が強く、ボクサーはタイトルの獲得を目指します。
一方のアマチュアは競技としての側面が強く、安全性を重視することからルールはより厳格です。「ヘッドギアを着用する」「ラウンド数が少ない」など、プロとはさまざまな違いがあります。
ボクシングの階級についてよくある質問

ボクシング観戦初心者のよくある疑問を、Q&A形式でまとめました。わからないことがあれば、ぜひチェックしてください。
Q1.プロとアマチュアで体重の単位が違うのはなぜ?
- プロボクシング:ポンド・ヤード法(イギリス発祥)
- アマチュアボクシング:キログラム(IBAが採用)
プロはイギリス発祥の伝統を重んじて「ポンド表記」、アマは国際基準の「キログラム表記」を採用しています。
プロボクシングでは、伝統的なポンド表記を使用しているため、キログラムに換算すると端数になります。
アマチュアボクシングは国際基準でキログラムを採用しているため、日本でも共通の単位で計量が可能です。
プロとアマチュアでは単位が違うため、階級名が同じでも体重範囲が違うこともあります。
Q2.複数の階級でタイトルを獲得できる?
プロボクシングでは、複数の階級でタイトルを獲得することを「複数階級制覇」といいます。たとえば2025年11月現在、井岡一翔選手や田中恒成選手、井上尚弥選手が4階級制覇の達成者です。
女子では藤岡奈穂子選手が、5階級制覇を成し遂げています。階級を変えながらタイトル獲得を目指すことになるため、複数階級制覇のためにはたゆまぬ努力と卓越した戦略が必要です。
Q3.初心者が見るならどの階級がいい?
ボクシング初心者が観戦するなら、中量級がおすすめです。ライト級からウェルター級まではパワーとスピードのバランスがよく、見応えがある試合が楽しめます。
一方で軽量級のスピード感のある展開や、重量級の一撃必殺もボクシングの魅力です。ボクシング観戦をしながら、好みの階級を探してみてはいかがでしょうか。
Q4.ボクシングで人気が高い階級は?
世界的に人気が高いのはヘビー級です。体格がよくパワーに優れたボクサーが戦うため迫力があり、派手なノックアウトが期待できます。ヘビー級史上初の4団体統一王者、オレクサンドル・ウシク選手が有名です。
一方で小柄なボクサーが多いアジア圏では、軽量級の人気が高い傾向。スター選手が生まれた階級に注目が集まることは多く、階級ごとにそれぞれ違う魅力があります。
Q5.体重がオーバーしたらどうなるの?
プロボクシングの場合、試合前日に計量が行われます。体重がオーバーすると時間の猶予が与えられることに。それでもクリアできなければ、ファイトマネーの没収や王座剥奪などの処分が科されます。
アマチュアでは試合当日の指定された時刻に計量して、初回計量で階級を決定。2回目以降に超過した場合は失格になり、試合は中止されるのが一般的です。
Q6.階級によって試合内容に差はある?
階級による試合内容の傾向は、以下の通りです。
- 軽量級:スピードとテクニック重視
- 中量級:スピードとパワーのバランス型
- 重量級:圧倒的なパワーでKO率が高い
ただし、パワフルな軽量級のボクサーや、スピードやテクニックに優れた重量級のボクサーも存在します。ボクサー個人のプレイスタイルにも、ぜひ注目してください。
階級による試合内容の違いに注目しよう
ボクシングの階級は、安全性と公平性を保つために生まれました。細かい階級設定によって、体格差に左右されない純粋な戦いが繰り広げられます。
階級によって試合内容や展開に傾向があるので、ぜひ注目してください。階級を知ることで、試合の見方がぐっと広がります。気になる階級の試合をチェックして、自分好みのボクサーを見つけてみましょう。
そのほか、ENSPORTS fanではボクシング観戦初心者にむけて基本ルールや試合時間を解説した記事も公開中。ぜひそちらも試合観戦前にチェックしてみてください。