この記事では、陸上のトラック競技の種類と基本ルール、観戦ポイントをまとめてご紹介します。陸上のトラック競技は「誰が一番速いか」を競うシンプルかつ奥が深いスポーツ。しかし、この単純明快さこそが魅力です。オリンピックや世界陸上でしか観ない方も、ポイントを知るだけで楽しみ方が変わるはずです。

そもそも陸上競技とは?

陸上競技とは「走る・跳ぶ・投げる・歩く」といった、人間の基本的な動きをベースにしたスポーツの総称。大きく3つに分けられます。

競技場のトラックを走る「トラック競技」には、短距離・中距離・長距離・リレー・ハードルなどが該当します。

「フィールド競技」は、競技場の内側や外側で行う、投げる・跳ぶ種目。走高跳・砲丸投・走幅跳など。1人の選手が複数のトラック種目とフィールド種目を行う「混成競技」もあります。

「ロード競技」は競技場の外で行う種目。マラソンや競歩のことです。

陸上競技の国際大会では、世界陸上やオリンピックが有名です。国内では、国体(国民体育大会)や日本選手権などがおこなわれています。

いずれの陸上競技も「速さ・高さ・遠さ」を競うシンプルな競技なので、初心者でも勝負の瞬間が分かりやすいのが魅力です。

陸上トラック競技の種類と特徴

トラック競技とは、陸上競技場内のトラックで行われる競技の総称。決められた距離を誰が一番早く走れるかを競うものです。

この章では、陸上のトラック競技各種目の基本ルールと特徴、見どころを簡単にご紹介します。

短距離走(100m・200m・400m)

【短距離走の基本ルール】

  • クラウチングスタート
  • 割り当てられたレーンを走る
  • 追い風2.1m以上だと正式な記録ではなく「参考記録」になる

短距離走は、スタートの瞬間からゴールまで目が離せない種目です。

100m競走

もっとも注目を集める種目は、人類最速を競う100m走。スタート時の反応速度がポイントで、トップ選手は一瞬でゴールしてしまうスピード感が魅力です。

200m競走

200m走は、トラックの半周を使って行うため、爆速なスピードとコーナリングが重要な種目。100mに出場する選手がこちらにもエントリーすることも多いです。

400m競走

400mは、トラック一周を全速力で走り抜ける種目。短距離ならではの瞬発力とゴールまでスピードを維持するための持久力も必要です。そのため「陸上競技でもっともキツい種目」と言われています。1985年から女子の世界記録は更新されていません。

中距離走(800m・1,500m)

【中距離走の基本ルール】

  • スタンディングスタート
  • 基本的にどのレーンを走ってもいい(800mは最初のカーブまでレーンを守る)
  • ほかの選手との接触や妨害は反則

中距離走は、駆け引きが面白い競技です。ラスト1周でのスパート合戦に注目しましょう。

800m競走

800m走は、トラック2周の中で激しい順位変動が見られる種目。激しい小競り合いによる接触や転倒などが多く「陸上の格闘技」とも称されています。スピード感だけでなく、各選手の位置取りも見逃せません。

1,500m競走

1,500mは、競技場のトラックを3周と3/4走る種目。こちらも順位変動が激しく、短距離走に近いスピードを約4分間も保ち続ける必要があります。競技者や陸上関係者には「センゴ」と略されがちです。

長距離走(5,000m・10,000m)

【長距離走の基本ルール】

  • スタンディングスタート
  • レーンの制限なし。トラックの内側を走る
  • 最後の1周の合図に鐘が鳴る

長距離走の見どころは、周回ごとの位置取りやペースの変化。すべてのランナーがひとつのトラックを走るため、選手の状況も確認や応援もしやすい競技です。

5,000m競走

5,000mは、競技場のトラックを12周と200m(12周半)走る種目。持久力だけでなくスピードや戦略が必要となります。男子は中距離走のように、レース前半からのスピードが勝負の鍵を握ることが多いです。

10,000m競走

10,000mは、400mトラックを25周走る種目。持久力だけではなくスピードも要求されます。長丁場のため予選がなく、いきなり決勝戦をおこないます。日本国内では、男女マラソンについで注目を集めている長距離種目です。

リレー

【リレーの基本ルール】

  • 1チーム4人
  • 第一走者だけスターティングブロックを使う
  • バトンパスは「テイクオーバーゾーン」内でおこなう
  • バトンを落としたら、バトンを渡すほうの選手が拾う

個人競技が多い陸上競技のなかでも、数少ない団体競技です。勝負のカギは、なんといってもバトンパスでしょう。日本チームはバトン技術で世界と戦っています。

4×100mリレー

4×100mリレーは、4人の走者でトラックを一周する種目。男子・女子・混合があります。単純に4人の足が速ければ良いのではなく、バトンパスの技術が順位やタイムが大きく変動します。個々の走力だけでは勝負の行方がわからないのです。

4×400mリレー

4×400mリレーは、1人トラック1周(400m)を走る種目。陸上の花形競技です。こちらも男子・女子・混合があります走る合計距離が1,600m(=約1マイル)であることから「マイル(マイルリレー)」と呼ばれています。

男子4×400mリレーは、陸上競技の大会の最終種目として実施される事が多いです。

ハードル走

【ハードル走の基本ルール】

  • 決められたレーンを走る
  • ハードルを飛び越える
  • ハードルを故意に倒さない

ハードル走と障害走は、スピードとテクニックが融合した種目。設置された障害をスムーズに越える技術は見応えがあります。

男性110m・女子100mハードル

男子110m、女子100mでは、10台のハードルが置かれた直線のレーンを走ります。美しいハードリング技術はもちろん、足が激しくハードルにぶつかる音や最後の1台を超えフィニッシュまでの意地のぶつかり合いは見逃せません。

400mハードル

400mハードルは、10台のハードルを飛び越えながら400mトラックを1周する種目。400mの走力に加えハードリング技術も重要です。こちらも400m走とともに「陸上競技でもっともキツい種目」と言われています。略して「ヨンパー」と呼ばれることも多いです。

障害走

【障害走の基本ルール】

  • 足や脚が障害物の外側のバーより低い位置を通ると失格
  • 水濠は飛び込んで通過する
  • すべての障害物を正しく通過しなければ失格

3,000m障害物競走

障害走は、障害物を28回、水濠を7回跳び越えながら、3,000mを走る種目。障害物は重く倒れない作りで、ハードル走の「ハードル」とは別物。水濠の水深は50〜70cmあります。水濠を水しぶきを上げながら超えていく様は圧巻です。

陸上のトラック競技5つの観戦ポイント

陸上競技のスタジアム観戦は、テレビでは味わえない「空気」と「迫力」が魅力。

しかし、ルールがシンプルであるがゆえに、現地での見方に少しコツが要るのも事実です。

ここでは、現地観戦をもっと楽しく・もっとわかりやすくするポイントを紹介します。

1.複数の競技が同時に進行する

テレビ中継では1種目ずつしか映りませんが、現地のスタジアムでは何種目も同時に進行しています。

たとえば、トラックで400mが始まったと思ったら、フィールドでは円盤投げや高跳び、という感じで、トラック競技は1競技しか行なわれませんが、フィールドでは複数の競技が進行しています。

最初は「どの競技に注目したらいいの?」と思うかもしれませんが、気になった競技に注目しましょう。ほかの観客の歓声で、その瞬間のクライマックスが把握しやすいはずです。

2.座席の位置ごとに見やすい競技がある

席の場所見やすい競技
ゴール前(ホームストレート)短距離走(100mゴール)・リレーのラスト
バックストレートスタートの瞬間(100m・200mなど)
フィールド側(コーナー寄り)跳躍・投てき種目(走幅跳・やり投など)
中央付近の高い位置全体を俯瞰できる(複数競技を同時に観たい人向け)

陸上競技は、座席の位置が観戦体験に直結するといっても過言ではありません。

何種目も同時進行で行なわれ、それぞれの競技のスタート位置や競技スペースがあらかじめ決まっています。

たとえばトラック競技でも、短距離であればゴール前のホームストレート、長距離はバックストレートがおすすめです。

事前に競技スケジュールと座席図を確認し、観たい競技にあわせた座席を選びましょう。

3.競技場の掲示板に注目する

競技場での現地観戦では、テレビのような実況や解説はありません。

そのかわり、競技場に設置された大型ビジョンや電光掲示板に注目すると、必要な情報が得られます。

  • 種目名
  • レーン番号
  • 選手名
  • 記録
  • 「○○選手、自己ベスト更新!」などの速報
  • 世界記録・大会記録との差(高順位の場合)

掲示板の表示のほか、日本選手権や国体ではFMラジオ解説やスマホで解説が聴けるサービスも。そちらもあわせてチェックしてみてください。

4.「勝負の分かれ目」を意識する

陸上は、一瞬で勝敗が決まる競技が多いです。

「今が勝負の瞬間だな」と思ったら、しっかり集中して観戦しましょう。わかりやすい目安は、以下3つです。

  • 短距離:スタート音の直前
  • 長距離:ラスト1周に入ったとき(鐘が鳴る)

この「ピークの瞬間」を見逃さなければ、陸上観戦の満足度も一気にあがります。

5. なにより「雰囲気」を楽しむ

競技に詳しくなくても、「一生懸命な選手を応援する」「声援や拍手の一体感を味わう」だけでも十分楽しめます。

陸上の会場は声援が飛び交い、試技ごとに拍手やどよめきが起こり、記録更新の瞬間には大歓声がおこるものです。

「知らない選手でも、いい記録が出ると拍手したくなる。」その感覚があれば、陸上競技観戦を楽しめるでしょう。

陸上競技を観戦するには?

陸上競技を観戦する方法は、おもに2つの方法があります。

テレビや配信を視聴観戦する

オリンピックや世界陸上など大きな大会は、テレビの生中継や配信を楽しむのもいいでしょう。

リプレイで勝負の分かれ目を確認することもできますし、解説があることで見どころが理解しやすいのがポイントです。


TVerやNHKプラスなどの配信は、スマホやタブレットからでも気軽に観戦できます。

スタジアムで観戦する

現地は“選手の気迫”や“スタート前の緊張感”を肌で感じられるので、1度は行ってみる価値ありです。

トラック全体が見える席(バックスタンドやゴール前)がいいでしょう。スタジアムは広いため、オペラグラスや双眼鏡を持っていくと観戦しやすいかもしれません。

スタジアムには屋根がありません。観戦中はずっと屋外にいることになるので、日除けグッズや飲み物は、必ず準備しておきましょう。

トラック競技は少しの知識があれば観戦が楽しくなる

陸上競技の観戦は「知らないことがあるのが普通」です。

はじめからすべて理解しようとせず「気になった競技だけでも楽しく観る」ぐらいでも大丈夫。観戦に慣れてきたら、ルールや記録の意味も自然と分かってきます。

まずは、目の前で繰り広げられる“人間の極限バトル”を、五感で味わってください。